六歳むっつ)” の例文
すこし大人しくなったかと思うと、六歳むっつの乙若は歩きながら居眠っていた。それをまして促すと、もう歩くのは嫌だと云う。何とさとしても
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお、おおそんな事もござんした。その時私は六歳むっつ七歳ななつ。そうしてお前は十歳とおか十一……ああ、あの頃は罪がなかった」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
芝区の某町に質屋があって、そこの女房が五歳いつつ六歳むっつになる女の子を残して病死したので、所天ていしゅは後妻を貰った。
藍微塵の衣服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「お前さん達のことばかり言い暮して来た。彼女が郷里くにへ連れられて行ったのは、六歳むっつの時だぞや。ろく記憶おぼえがあらすか。今度初めて東京を見るようなものだわい」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
西部フリースランド(オランダ)にあるフラネッケルという名まえの小都会で、五歳いつつ六歳むっつぐらいの女の子と男の子、まあそういったようなとしのいかない子どもたちが遊んでいました。
六歳むっつのときに親戚にあたる上田市の長谷川家へ養女に貰われていった。小学校時代から勝気で、男のに鎌を振りあげられて頭に傷を残している。十六歳の時になって不幸はきざしはじめた。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あの歿なくなったのは六歳むっつときでございましたが、それがこちらの世界せかい大分だいぶおおきくそだっていたのにはおどろきました。おさがおはそのままながら、どうても十歳位とおくらいにはえるのでございます。
……年紀としは、うさね、七歳ななつ六歳むっつぐらゐな、色の白い上品な、……男の児にしては綺麗きれい過ぎるから女の児——だとリボンだね。——青いリボン。……幼稚ちいさくたつてと限りもしないわね。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三尺に足らない刀身にりかたまって、まだ五歳いつつ六歳むっつの幼少から、きびしい父の手でたたきこまれたものだの、その後、関ヶ原のいくさで体験したものだの、また
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暦や錦絵にしきえはり付けた古壁の側には、六歳むっつに成るお房と、四歳よっつに成るお菊とが、お手玉の音をさせながら遊んでいた。そこいらには、首のちぎれた人形も投出してあった。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは私の故郷くにことばでありますが、私の故郷では嬰児あかんぼのことをややと云いますが、父は私を五歳いつつになっても六歳むっつになっても、ややと呼んで、好く母に笑われたと云います。
薬指の曲り (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
玄冶店げんやだなにいた国芳くによしが、豊国とよくにと合作で、大黒と恵比寿えびす角力すもうをとっているところを書いてくれたが、六歳むっつ七歳ななつだったので、何時いつの間にかなくなってしまった。画会なぞに、広重ひろしげも来たのを覚えている。
ことし六歳むっつ乙若おとわかと、八歳になった今若いまわかのふたりが、寒さに、ひしと抱き合って、無心な寝息をもらしていた。それに掛けてあるのは一枚の母の上着だけであった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叔母おばさんのくなった時は、なにしろ一番年長うえの泉ちゃんが六歳むっつにしか成らないんだからね。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、六歳むっつの彼女は言ったものだった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)