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億劫
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おくくふ
ふりがな文庫
“
億劫
(
おくくふ
)” の例文
斯うなると改めて東京へ歸つてゆくのが
億劫
(
おくくふ
)
になつた。いつそ此儘この沼津に住んでしまはうではないか、などと夫婦して話す樣になつた。
樹木とその葉:04 木槿の花
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
歸
(
かへ
)
りも
遲
(
おそ
)
いが、
歸
(
かへ
)
つてから
出掛
(
でかけ
)
る
抔
(
など
)
といふ
億劫
(
おくくふ
)
な
事
(
こと
)
は
滅多
(
めつた
)
になかつた。
客
(
きやく
)
は
殆
(
ほと
)
んど
來
(
こ
)
ない。
用
(
よう
)
のない
時
(
とき
)
は
清
(
きよ
)
を十
時前
(
じまへ
)
に
寐
(
ね
)
かす
事
(
こと
)
さへあつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「さうでもないさ。」と漱石氏は
億劫
(
おくくふ
)
さうに言つた。「僕は芸者が嫌ひだつて言つたんぢやない、人間全体が嫌ひなんさ。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
富岡は、もう一度逢ひたいと云はれて、ゆき子の気持ちは充分判つてはゐたが、何故かそこまで話しあふのも
億劫
(
おくくふ
)
だつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
日本植物圖鑑ではすいばと云ふのが普通の名稱として認められてゐる。今はさう云ふ事が
億劫
(
おくくふ
)
であるから、此植物に關する
本草學
(
ほんざうがく
)
的の詮索は御免を
蒙
(
かうむ
)
る。
すかんぽ
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
▼ もっと見る
執筆中は女中を呼んで籠をあけさせるのさへ
億劫
(
おくくふ
)
なものであるから、机の周りが散らかつて仕方がない。
文房具漫談
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
断られてみると、新しい宿を
探
(
さが
)
すのも
億劫
(
おくくふ
)
だしするので従姉の時子の宅へ泊めて貰ふことにした。
曠日
(新字旧仮名)
/
佐佐木茂索
(著)
蓮見も思はないことはなかつたが、長年デパアトで子供洋服の見立をやつて来てゐたので、何か
億劫
(
おくくふ
)
であつた。甘やかせば甘やかすほど附けあがる咲子の性質も気に入らなかつた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
インキ瓶を火鉢に縁に載せて、瓶の口から
水蒸気
(
ゆげ
)
が立つ位にして置いても、ペンに含んだインキが半分もなくならぬうちに凍つて了ふ、葉書一枚書くにも、それは/\
億劫
(
おくくふ
)
なものであつた。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
年
(
とし
)
が
行
(
い
)
かない
爲
(
ため
)
か、
舌
(
した
)
が
能
(
よ
)
く
回
(
まは
)
らないので、
抗辯
(
かうべん
)
のしやうが
如何
(
いか
)
にも
億劫
(
おくくふ
)
で
手間
(
てま
)
が
掛
(
か
)
かつた。
宗助
(
そうすけ
)
は
其所
(
そこ
)
を
特
(
とく
)
に
面白
(
おもしろ
)
く
思
(
おも
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
他の土地へ移るといふも
億劫
(
おくくふ
)
だし、矢張り沼津を——私が越して來てゐるうちに沼津町から沼津市に變つてゐた——中心として
恰好
(
かつかう
)
な空家は無いかと探し始めた。
樹木とその葉:04 木槿の花
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
耶蘇は「汝等野の百合を見よ」と言つたが、百合を見ようとすれば、馬に乗つて郊外まで出掛けなければならぬ。それも
億劫
(
おくくふ
)
だ。蚊や蠅で判る事だつたら何も
態々
(
わざ/\
)
郊外まで出掛けるにも及ぶまい。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
気紛れな旅のやうな、
呆
(
ぼ
)
んやりした心で、ゆき子は、寒々とした
黄昏
(
たそがれ
)
の車窓を眺めてゐた。静岡まで帰つて、実家へ行つてみようかとも考へたが、それも退屈だつた。知つた人に逢ふ事が
億劫
(
おくくふ
)
だつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
二三度土を踏みしめてゐると、急に新しい血が身軆に湧いて、
其儘
(
そのまま
)
玄關を出かけてゆく。實は、さうするまではよそに出懸けてゆくにも
億劫
(
おくくふ
)
なほど、疲れ果てゝゐた時なのである。
樹木とその葉:02 草鞋の話旅の話
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
のみならず、
斯
(
こ
)
んな
人
(
ひと
)
の
常態
(
じやうたい
)
として、
紙入
(
かみいれ
)
の
底
(
そこ
)
が
大抵
(
たいてい
)
の
場合
(
ばあひ
)
には、
輕擧
(
けいきよ
)
を
戒
(
いまし
)
める
程度内
(
ていどない
)
に
膨
(
ふく
)
らんでゐるので、
億劫
(
おくくふ
)
な
工夫
(
くふう
)
を
凝
(
こら
)
すよりも、
懷手
(
ふところで
)
をして、ぶらりと
家
(
うち
)
へ
歸
(
かへ
)
る
方
(
はう
)
が、つい
樂
(
らく
)
になる。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
公園の何山とかいふに登れば眺望がいゝとの事であつたが、勞れてゐて出來なかつた。錢湯に行くすら
億劫
(
おくくふ
)
であつた。勞れるわけはないのだが、久し振に家を出た氣づかれとでもいふであらう。
梅雨紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
億
常用漢字
小4
部首:⼈
15画
劫
漢検準1級
部首:⼒
7画
“億劫”で始まる語句
億劫千万