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偽瞞
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ぎまん
ふりがな文庫
“
偽瞞
(
ぎまん
)” の例文
彼が佐貝へ来て三十日ほどたつ、すでにこの市の不正と
偽瞞
(
ぎまん
)
と悪徳の所在を調べ、飢と寒さと物資欠乏に泣く市民の実情を知った。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
盗まれた
二品
(
ふたしな
)
というのも、ひょっとしたら彼女の
偽瞞
(
ぎまん
)
であるかも知れない。小さな二品を人知れず処分するのはさして面倒なことではない。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「
偽瞞
(
ぎまん
)
であろうとカラクリであろうと、それが信じられているうちは、幸福なのでございますよ。あの可哀そうな業病人達は」
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
たとえ、
嫉視
(
しっし
)
、迫害、排撃、あらゆるものがこの一身にあつまろうとも、範宴が講堂に立つからには
御仏
(
みほとけ
)
を
偽瞞
(
ぎまん
)
の
衣
(
きぬ
)
につつむような
業
(
わざ
)
はできぬ
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
オットーは
偽瞞
(
ぎまん
)
家でも虚構家でもなかったが、あたかも
吃者
(
どもり
)
が言葉を発するのに困難を感ずるように、真実を言うのに天性的の困難を感じていた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
日本人の生活に残存する封建的
偽瞞
(
ぎまん
)
は根強いもので、ともかく旧来の一切の権威に懐疑や否定を行ふことは重要でこの敗戦は絶好の機会であつたが
天皇小論
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
それは恐ろしい矛盾でした、婦人の言葉は真剣で熱心で、少しの
偽瞞
(
ぎまん
)
があろうとも思われなかったのです。
法悦クラブ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
このことを求めて追えば、
如何
(
いか
)
に地から生れ出た郷土のものに、工藝として正しいものがあるかに気附くであろう。都会の工場から生れるものには
偽瞞
(
ぎまん
)
が如何に多いことか。
地方の民芸
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
溪
(
たに
)
の向こう側には杉林が山腹を
蔽
(
おお
)
っている。私は太陽光線の
偽瞞
(
ぎまん
)
をいつもその杉林で感じた。昼間日が当っているときそれはただ雑然とした杉の
秀
(
ほ
)
の堆積としか見えなかった。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
しかし、恥を知らぬ自堕落な連中が、どこまでもただ道楽を道楽として
臆面
(
おくめん
)
もなく下等にばか話を
吹聴
(
ふいちょう
)
し合っている時、
一人
(
ひとり
)
沈黙を守るのは
偽瞞
(
ぎまん
)
でもなければ
衒
(
ぶ
)
ることでもない。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
私たちが
如何様
(
いかよう
)
に自分の住む
此
(
こ
)
の近代の都市を誇称しようとも、そして昼夜のあらゆる時を通じて
其処
(
そこ
)
に渦巻くどんな悪徳や鋭ぎ澄ました思想によつて
昂奮
(
こうふん
)
し
偽瞞
(
ぎまん
)
されてゐようとも
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
ああ、この
偽瞞
(
ぎまん
)
にみちたインチキ日光に、青年は幾日
幾月
(
いくげつ
)
を憧れたことだったろう。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
小作人たちと自分とが、本当に人間らしい気持ちで互いに
膝
(
ひざ
)
を交えることができようとは、夢にも彼は望み得なかったのだ。彼といえどもさすがにそれほど自己を
偽瞞
(
ぎまん
)
することはできなかった。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「
偽瞞
(
ぎまん
)
がかい?」
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
「申されたり王朗。足下の弁やまことによし。しかしその論旨は自己
撞着
(
どうちゃく
)
と
偽瞞
(
ぎまん
)
に過ぎず、聞くにたえない
詭弁
(
きべん
)
である。さらばまず説いて教えん」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
我々をして左様に信じさせたものは、小山田六郎氏の驚嘆すべき
偽瞞
(
ぎまん
)
であったとしか考えられないのであります。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その
偽瞞
(
ぎまん
)
に気づかぬどころか、現実のうわべだけを作中世界に似せ合わせることに成功することによって、彼は益々自作の熱愛読者となり、自作に酔っぱらい
オモチャ箱
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
すなわちそれは、穏和の
偽瞞
(
ぎまん
)
であった。一つの力に衝突してそれを切り捨てることができない時に、ひそかに暗黙のうちにそれを窒息させようとすることだった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼等が自動車を見違えたのか、又は彼の男が故意に
偽瞞
(
ぎまん
)
を行って彼等をまいてしまったのか、いずれとも断定し兼ねた。つまり狐につままれた感じである。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
おぬしらの護らんという自由とは何? 伝統とは何? それは皆、自己の栄華にだけ都合のよい
偽瞞
(
ぎまん
)
の
護符
(
ごふ
)
ではないか。もはやそんな護符が通用する世ではないぞ。時勢を直視なさい。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なぜなら彼らは、良心と良識とをもたずにそういうことに従事してる者があまりに多いのを見るからであり、自分もそれらの
偽瞞
(
ぎまん
)
者や馬鹿者どもと同視されはすまいかを恐れるからであった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
加古川の
沙弥
(
しゃみ
)
のささやきが臆病な耳もとで
嘲
(
わら
)
うように聞える。まざまざと
偽瞞
(
ぎまん
)
の
法衣
(
ころも
)
につつまれた獣心の
相
(
すがた
)
を自身の中に発見する、万葉の話も、春秋のうわさも実はうわの空なのだった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丁度その時は、通り過ぎる
空
(
から
)
自動車もなかったので、彼女は当然柾木の車に走り寄った。いうまでもなく、柾木の
偽瞞
(
ぎまん
)
が
効
(
こう
)
を
奏
(
そう
)
して、彼女はその車を、辻待ちタクシーと思い込んでいたのである。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
、悪魔といったな。ようし、悪魔になってやろう。こんな
偽瞞
(
ぎまん
)
の山に、仏の
法
(
のり
)
のと、虚偽な
衣
(
ころも
)
に、僧の
仮面
(
めん
)
をかぶっているより、真っ裸の悪魔となったほうが、まだしも、人間として、立派だ
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馬鹿馬鹿しいというのはね、
偽瞞
(
ぎまん
)
の方法が子供だましみたいだということで。だが、そのやり方は実にずば抜けて大胆不敵なのです。それが為に、この犯罪人は却って安全であったとも云い
得
(
う
)
る。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
婆から「うまいこと、行きましたよ」と
囁
(
ささや
)
かれて、彼もまずは、ほっとした色だが、近所の外聞、人目の
偽瞞
(
ぎまん
)
、そして役署の検死やら火葬の認証やら、無事、灰にしてしまうまでは、まだまだ
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
殊
(
こと
)
に罪を他に転嫁する為の
偽瞞
(
ぎまん
)
が行われた場合は一層それが
甚
(
はなはだ
)
しい。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
愛之助の方で、それ程も、怪物の
偽瞞
(
ぎまん
)
に物狂わしくなっていたのだ。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
『われわれの眼を
偽瞞
(
ぎまん
)
する大石の
策略
(
さくりゃく
)
だろう』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
偽
常用漢字
中学
部首:⼈
11画
瞞
漢検1級
部首:⽬
16画
“偽瞞”で始まる語句
偽瞞者