俛首うなだ)” の例文
ブラリブラリと俛首うなだれて歩いて來る。竹山は凝と月影に透して視て居たが、どうも野村らしい。帽子も冠つて居ず、首卷も卷いて居ない。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
勘次かんじ午餐過ひるすぎになつてそとた。紛糾こぐらかつたこゝろつてかれすこ俛首うなだれつつあるいた。あたゝかなひかりはたけつち處々ところ/″\さらりとかわかしはじめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼女は、そう言う私の顔をすこし近眼じみた可愛いひとみでチョット見上げていたが、何故か多少、悄気しょげたように俛首うなだれて軽いタメ息を一つした。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たしかに道をあやまったものと思いました。よろよろと自分を支える力を失うが如く、大きな木の根に腰を卸して、ほっと深い息をついて俛首うなだれてしまいました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
胸を突くやうな坂、雨と霧とに滑る山路、雑草の中には大きな山百合が俛首うなだれて咲いて居た。霧の間から見えて隠れる木立の幹はあたりを何処となく深山らしく見せた。
草津から伊香保まで (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
瞬間、私は、深い/\憂鬱に落ち込んで、それきり俛首うなだれて默つてしまつた。
滑川畔にて (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
(ガクリ俛首うなだれる)
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
うしろたけはやしはべつたりと俛首うなだれた。ふゆのやうにさら/\といさぎよおちやうはしないで、うるほひをつたゆきたけこずゑをぎつとつかんではなすまいとしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私の持前の気弱さからどうしてもさからってはいけないような気持になりながら、暗黒の中で両腕を握られたまま、固くなって俛首うなだれておりました。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
男は、前よりも俛首うなだれて、空気まで凍つた様な街路みちを、ブラリブラリと小さい影を曳いて、洲崎町の方へ去つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は音のない雷に打たれたようにドキンとしながら、ガックリと俛首うなだれてしまいました。多分、私の顔は死人のように青めていたことでしょう。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「さうでござんすね」勘次かんじはぐつたりと俛首うなだれて言辭ことばしりきとれぬほどであつた。ふかうれひ顏面かほしわつよきざんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
男は、前より俛首うなだれて、空氣まで凍つた樣な街路みちを、ブラリブラリと小さい影を曳いて、洲崎町の方へ去つた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、真砂町へ抜ける四角よつかどから、黒い影が現れた。ブラリブラリと俛首うなだれて歩いて来る。竹山はじつと月影に透して視て居たが、どうも野村らしい。帽子も冠つて居ず、首巻も巻いて居ない。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そうして心持ち俛首うなだれながら若林博士の言葉に耳を傾けた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鈍い歩調あしどりで二三十歩、俛首うなだれて歩いて居たが、四角よつかどを右に曲つて、振顧ふりかへつてモウ社が見えない所に來ると、渠は遽かに顏を上げて、融けかかつたザクザクの雪を蹴散し乍ら、勢ひよく足を急がせて
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
鈍い歩調あしどりで二三十歩、俛首うなだれて歩いて居たが、四角よつかどを右に曲つて、振顧ふりかへつてもモウ社が見えない所に来ると、渠はにはかに顔を上げて、融けかかつたザクザクの雪を蹴散し乍ら、勢ひよく足を急がせて
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)