さむら)” の例文
舎人あるいは近習・資人などとあるものと同じく、その仕うる人の身辺に近くさむらいて、その用を弁じ、その身を護りしものなり。
武士を夷ということの考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
「見るからたくましそうな。さすがは少納言殿のお内にさむらう人ほどある」と、玉藻はうなずいて、さてまた語り出した。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
仙臺の或古老の話に據ると、伊達家のさむらひがあつて、昔、本道ほんだうへ來て、桐の苗を澤山植ゑつけたことがある。それがどこの山であつたか、記録には殘つてゐない。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
二葉亭は手拭てぬぐいあねさんかぶりにしてほうきかかえ、俯向うつむき加減に白い眼をきつつ、「ところ、青山百人町の、鈴木主水もんどというおさむらいさんは……」と瞽女ごぜぼうの身振りをして
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
掛け宰領さいりやう二人づつあとより麻上下あさがみしもにて股立もゝだちとりたるさむらひ一人是は御長持おながもちあづかりの役なりつゞいて金御紋きんごもん先箱さきばこ二ツ黒羽織くろはおり徒士かち八人煤竹すゝたけ羅紗らしやふくろに白くあふひの御紋を切貫きりぬき打物うちもの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
宇治入道殿にさむらひける嬉しさといふはしたものを、顕輔卿懸想けさうせられたるに、つれなかりければ遣はしける。
間人考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
掛し長持ながもち二棹露拂つゆばらひ二人宰領二人づつなり引續ひきつゞきて徒士かち二人長棒の乘物にて駕籠脇かごわき四人やり挾箱はさみばこ草履取ざうりとり長柄ながえ合羽籠かつぱかご兩掛りやうがけ都合十五人の一列は赤川大膳にて是は先供さきとも御長持あづかりの役なり次に天一坊の行列は先徒士九人網代あじろの乘物駕籠脇のさむらひは南部權兵衞本多源右衞門遠藤森右衞門諏訪すは右門遠藤彌次六藤代要人かなめ等なり先箱二ツは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
同じころにおける授刀衛の兵士またこれを授刀舎人と称す。「トネリ」の義もって解すべし。後世武士を「サムライ」と称するまたその主にさむらうの意にて、帳内・近習・舎人などいうものと同一なり。
武士を夷ということの考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)