わざ)” の例文
縮をおる処のものはよめをえらぶにも縮のわざを第一とし、容儀ようぎつぎとす。このゆゑに親たるものは娘のおさなきより此わざ手習てならはするを第一とす。
また、吉野の白檮かし横臼よくすを作りて、その横臼に大御酒おほみきみて、その大御酒を獻る時に、口鼓くちつづみを撃ちわざをなして、歌ひて曰ひしく
暫くは日の天にちゆうするが如き位にありて、世の人の讚歎の聲に心惑ひ、おのがわざの時々刻々くだりゆくをさとらず、若し此時に當り早くはかりごとをなさゞるときは
あわれ、今川氏真をして、鞠を蹴るわざの十分の一でも、文武に心を入れていたら、可惜あたら洛陽らくよう余伎よぎの人となって、諸人の見世物にはさらされまいものを……。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが歌舞かぶ管絃かんげんわざに携わっていて、それをアソビと謂い、アソビもまた偶然に同じ「遊」の漢字をててべんじたので、どちらが元やら後には不明になったが
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うちにばかり居ましてわざの事のみを考えて居りますから貯えとてもありません。お大名から呼びに来てもきません。贔屓のお屋敷から迎いを受けても参りません。
梅若七兵衛 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
芸に達して、天人になり澄ましていれば、羽衣さえ取返せば、人間なんぞにかかわりはないのだけれど、まだどうも未熟でね、雑念がまじるから、正面を切ってわざの上でもきっぱりとり切れないんだ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明らかに「わざ」であり、また「喜劇」であった。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
二里あまりへだてたる村より十九歳のよめをむかへしに、容姿すがたにくからず生質うまれつき柔従やはらかにて、糸織いとはたわざにも怜利かしこければしうとしうとめ可愛かあいがり、夫婦ふうふの中もむつまし家内かない可祝めでたく春をむかへ
こはかゝるわざもて名を馳せし人の常なり。
あるひはそのわざによりてよめにもらはんといはるゝ娘もあれば、利をつぎにして名をあらそふ。