あふむ)” の例文
「何ツ」松島は猛獅まうしの如くをどり上りつ、梅子の胸をとらへてあふむけに倒せり、「女と思つてゆるして置けば増長しやがつて——貴様きさまの此の栄耀ええうを尽くすことの出来るのは誰のお蔭だ、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
紀昌きしやうこゝにおいて、いへかへりて、つまはたもとあふむけにして、まなこみひらいていなごごとく。二年にねんのち錐末すゐまつまなじりたつすといへどまたゝかざるにいたる。いてもつ飛衞ひゑいぐ、ねがはくはしやまなぶをん。
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けげんな顔をふりあふむけてゐる伴人ともびとらに、柔和な笑顔を向けた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
其れ迄は記憶して居るが後はどうしたか少しも覚えない、不図ふと気が付いて見ると、自分は左腕ひだりで血に染まつた小米の屍骸しがいあふむけに抱いて、右手に工場用の大洋刀おほナイフを握つて居たと云ふのです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)