五彩ごさい)” の例文
つくづく見れば羽蟻はありの形して、それよりもややおおいなる、身はただ五彩ごさいの色を帯びて青みがちにかがやきたる、うつくしさいはむかたなし。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
音楽が交錯こうさくして、聞こえて来る。五彩ごさいの照明の美しさ、それは建物を照らしているだけではなく、大空にも照りはえてにじの国へいったようだ。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今まではこの五彩ごさいまばゆいうちに身を置いて、少しは得意であったが、気が付いて見ると、これらは皆異国産の思想を青くじたり赤く綴じたりしたもののみである。
『東洋美術図譜』 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの官窯かんようであったしん朝の五彩ごさいを見てもそうです。単に驚くべき技巧の発達のみが示されて、美は埋没されてしまいました。あの抹茶器として作られたものを見てください。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ひれは神女ののようにどうを包んでたゆたい、体色はり立てのようなあざやかな五彩ごさいよそお
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ラフマニノフのこの曲などは、パハマンに比べると、芝居気が入り過ぎて不愉快でさえある。パハマンの演奏は、陽炎かげろうのように舞う五彩ごさいまぼろしの美しさだ。決してレヴューの舞台で見るワルツではない。
そしてメリー号がまだ入港しない先から、旗をふったり、五彩ごさい紙片しへんをばらまいたりして、ものすごい熱狂ぶりであった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただまのあたりに見れば、そこに詩も生き、歌もく。着想を紙に落さぬとも璆鏘きゅうそうおん胸裏きょうりおこる。丹青たんせい画架がかに向って塗抹とまつせんでも五彩ごさい絢爛けんらんおのずから心眼しんがんに映る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たまか、黄金こがねか、にもたうと宝什たからひそんで、群立むらだつよ、と憧憬あこがれながら、かぜ音信たよりもなければ、もみぢを分入わけいみちらず……あたか燦爛さんらんとして五彩ごさいきらめく、天上てんじやうほしゆびさしても
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうちにどうした拍子ひょうしかトランクの蓋が開いて、その中身が五彩ごさいの滝となって下に落ちて来た。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)