不快ふかい)” の例文
ぼくはそのかおながめた時、おもわず「ずいぶんやせましたね」といった。この言葉ことばはもちろん滝田くん不快ふかいあたえたのにちがいなかった。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
家人かじんのようすにいくばくか不快ふかいいだいた使いの人らも、お政の苦衷くちゅうには同情どうじょうしたものか、こころよく飲食いんしょくして早そうにった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ところで不幸ふこうなことに、わたしたちが仕度をしているあいだ、巡査じゅんさが一人そばに立っていて、わたしたちの仕事を不快ふかいらしい顔で見ていた。
このさわぎとともに、徳川家以外とくがわけいがいたまのものは、かれらの横暴おうぼうをひそかに不快ふかいに思っていたので、みな見て見ぬふりして山をおりてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わたしどもが、ここへはいってまいりまして、さぞご不快ふかいでしょうが、」と、アッカが言いました。
「いったい、なんのため、こう自分じぶんばかりているのだろう。」と、教師きょうしは、不快ふかいおもいました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
十一月もすえであった。こがらしがしずかになったと思うと、ねずみ色をした雲が低く空をとじて雪でもるのかしらと思われる不快ふかい午後ごごであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
とりのこされた一学いちがくは、なにか、急病きゅうびょう不快ふかいでも起したのかと思っていたが、それから、待てどくらせど、神主の返辞へんじもなければ神官しんかんたちの応接おうせつもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は明かに不快ふかいらしかった。が、僕の言葉には何も反駁はんばくを加えなかった。それから、——それから何を話したのであろう? 僕はただ僕自身も不快になったことを覚えている。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうおもうと、いいれぬ不快ふかいを、だれがしたか、この残忍ざんにん行為こういからかんじられました。きているとり本位ほんいにして、かえって、無理むりとりちいさくしようとする、冷酷れいこくさをおもわずにいられません。
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
最後さいごまで、だまっていた父親ちちおやや、おどそうとしたわかおとこかおは、三にんにいつまでものこっていて、不快ふかいかんじがしたけれど、小西こにしからは、まったくそれと反対はんたいな、こころよ印象いんしょうけたのであります。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)