不可解ふかかい)” の例文
わたくしはこのときはじめて、ひやうのない疲勞ひらう倦怠けんたいとを、さうしてまた不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつ人生じんせいわづかわすれること出來できたのである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「あいつはおれ財産ざいさん惹着ひきつけられてゐるんだ。」大久保おほくぼはいつかさうつてゐたけれど、竹村たけむらには其意味そのいみ全然ぜんぜん不可解ふかかいであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
放送局裏に、不可解ふかかいの部隊が集結しているぞ。突入とつにゅう誰何すいかしろ。友軍だったら、短銃ピストルを二発射て。怪しい奴だったら、三発うて。避難民だったら、四発だ。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
貴方あなたの様にさう何遍ことわつたつて、つまおんなじ事ぢやありませんか」と梅子は説明した。けれども、其意味がすぐ代助のあたまにはひゞかなかつた。不可解ふかかいげて梅子を見た。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
卑怯ひきょう成人せいじんたちに畢竟ひっきょう不可解ふかかいなだけである。
そしてその部屋には、土や石できずいた寝台のようなものがあり、壁にはさまざまのりで、絵画や模様らしきものや不可解ふかかいな古代文字のようなものがきざまれてあった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この隧道トンネルなか汽車きしやと、この田舍者ゐなかもの小娘こむすめと、さうしてまたこの平凡へいぼん記事きじうづまつてゐる夕刊ゆふかんと、——これが象徴しやうちようでなくてなんであらう。不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつ人生じんせい象徴しやうちようでなくてなんであらう。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それからわたしは、注意をもっぱら大西洋にむけて、パリ大学から発射する電波の力をかり、研究をつづけてみましたところ、いま申した不可解ふかかいな放射線——これをかりにZ線とよんでおきましょう。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)