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うわべ
ふりがな文庫
“
上部
(
うわべ
)” の例文
結果が高木に対して勝つか負けるかに帰着する
上部
(
うわべ
)
から云えば、競争と見えるかも知れないが、動力は全く独立した一種の働きである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
良人が、自分をほんとうは、少しも愛していず、ただ
上部
(
うわべ
)
の調子だけを合わしていることも、とっくに承知していた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
このまゝそつと御帰宅なされ候はゞ、親御様も
上部
(
うわべ
)
はとにかく、
必
(
かならず
)
手ひどい
折檻
(
せっかん
)
などはなされまじ。
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
……何しろ深い谷の底のことではあるし、堅雪にはなっていたが、
上部
(
うわべ
)
の解けた所に踏みこむと胸まで埋まるくらい積もっているのだから、先生にはどうしていいか分らなかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
たいていの事が
否応
(
いやおう
)
なしに進行します。万事が腹の底で済んでしまいます。それで
上部
(
うわべ
)
だけはどこまでも理想通りの人物を
標榜
(
ひょうぼう
)
致します。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
そうした
上部
(
うわべ
)
丈けの甘言に乗って、ウカ/\と夫人の
掌上
(
てのうえ
)
などに、止まっている中には、あの
象牙
(
ぞうげ
)
骨の
華奢
(
きゃしゃ
)
な扇子か何かで、ビシャリと
一打
(
ひとうち
)
にされるのが
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかし世の中は虚偽でも
上部
(
うわべ
)
さえ形式に合っていれば、人が許すものだから、互の終りを全くして幸福を得ようとするには
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その上、愛児の生長が彼を家庭につなぎ止めているのと、酒をたしなまず、花柳界の趣味を解しないため、路傍の花に心を奪わるることなく、
上部
(
うわべ
)
だけは善良な良人であった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「本当に違った人になったのなら何時でも取り消すが、そうじゃないんだ。違ったのは
上部
(
うわべ
)
だけで腹の中は
故
(
もと
)
の通りなんだ」
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、相手の本心を知らない父は、その空々しい
上部
(
うわべ
)
の理由
丈
(
だけ
)
に、うか/\と乗せられて、もしや相手の
無躾
(
ぶしつけ
)
な贈り物を、受け取りはしないかと、瑠璃子はひそかに心を痛めた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
こうして自分で自分を離れた気分を持ちながら、
上部
(
うわべ
)
だけを人並にやって行くのに
傍
(
はた
)
の者はなぜ不審がらないのだろうと疑ぐって見たりした。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この女の
嫣然
(
えんぜん
)
たる姿態や、妖艶な媚は皆
上部
(
うわべ
)
ばかりの技巧なのだ。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
現にこの私は
上部
(
うわべ
)
だけは温順らしく見えながら、けっして講義などに耳を
傾
(
かたむ
)
ける性質ではありませんでした。始終
怠
(
なま
)
けてのらくらしていました。
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれども主人がかの煙草入を差して談判に来て以来、森本の事はもう聞くまいと決心したので、腹の中はともかく、
上部
(
うわべ
)
は知らん顔をしていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
上部
(
うわべ
)
にあらわれた言葉のやりとりはただこれだけに過ぎなかった。しかし三沢も自分もそこに変な
苦
(
にが
)
い意味を味わった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「文学書だから
上部
(
うわべ
)
を奇麗にする必要があるのかね。それじゃ文学者だから金縁の眼鏡を掛ける必要が起るんだね」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ
上部
(
うわべ
)
だけはいかにも静である。もし
手足
(
しゅそく
)
の挙止が、内面の消息を
形而下
(
けいじか
)
に運び
来
(
きた
)
る記号となり得るならば、この二人ほどに
長閑
(
のどか
)
な
母子
(
おやこ
)
は容易に見出し得まい。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
きりりと釣り上げた眼尻の尽くるあたりに、
疳
(
かん
)
の
筋
(
すじ
)
が裏を通って額へ突き抜けているらしい
上部
(
うわべ
)
を、浅黒く
膚理
(
きめ
)
の細かい皮が包んで、外見だけは
至極
(
しごく
)
穏やかである。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
気の
所為
(
せい
)
か、茶を運ぶ時にも、妙に疑ぐり深い眼付をして、見られる様でならなかった。然し三千代は全く知らぬ顔をしていた。少なくとも
上部
(
うわべ
)
だけは平気であった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
上部
(
うわべ
)
から見ると、夫婦ともそう物に
屈托
(
くったく
)
する
気色
(
けしき
)
はなかった。それは彼らが小六の事に関して取った態度について見てもほぼ想像がつく。さすが女だけに御米は一二度
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おれは言葉や様子こそあまり上品じゃないが、心はこいつらよりも
遥
(
はる
)
かに上品なつもりだ。六人は
悠々
(
ゆうゆう
)
と引き
揚
(
あ
)
げた。
上部
(
うわべ
)
だけは教師のおれよりよっぽどえらく見える。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
兄さんの態度は碁を中途でやめた時ですら落ちついていました。
上部
(
うわべ
)
から見ると何の異状もない兄さんの心持は、おそらくあなた方には理解されていないかも知れません。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの
方
(
かた
)
は少し
己惚
(
おのぼ
)
れ過ぎてるところがあるのよ。それから内側と外側がまだ一致しないのね。
上部
(
うわべ
)
は大変
鄭寧
(
ていねい
)
で、お
腹
(
なか
)
の中はしっかりし過ぎるくらいしっかりしているんだから。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黒ずんだ、毒気のある、恐ろし
味
(
み
)
を帯びた調子である。この調子を底に持って、
上部
(
うわべ
)
はどこまでも派出に
装
(
よそお
)
っている。しかも人に
媚
(
こ
)
ぶる
態
(
さま
)
もなければ、ことさらに人を招く様子も見えぬ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「片付いたのは
上部
(
うわべ
)
だけじゃないか。だから御前は形式張った女だというんだ」
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ
上部
(
うわべ
)
から見て平生の調子と何の変るところもない母が、この際高木と僕を比較して、腹の中でどう思っているだろうと考えると、僕は母に対して気の毒でもありまた
恨
(
うら
)
めしくもあった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
上部
(
うわべ
)
の
所作
(
しょさ
)
だけを人並に尽したところで、今さら始まらないんだから、いっそ下手に
騙
(
だま
)
し合う
手数
(
てかず
)
を
省
(
はぶ
)
いて、良心に
背
(
そむ
)
かない顔そのままで、面と向き合おうじゃないかという無言の相談が
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「なに本当はお延のお
蔭
(
かげ
)
で痛み始めたんだ」とも云えなかった津田は、この時急に自分が自分に
駄々
(
だだ
)
っ
子
(
こ
)
らしく見えて来た。
上部
(
うわべ
)
はとにかく、腹の中がいかにも兄らしくないのが
恥
(
は
)
ずかしくなった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“上部”の意味
《名詞》
上 部(じょうぶ)
(物体などにおいて)上側にある部分。
(出典:Wiktionary)
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
部
常用漢字
小3
部首:⾢
11画
“上部”で始まる語句
上部八風斎
上部界
上部艇首