“上書（うはがき）” の例文
三左　上書（うはがき）は女文字で樣（さま）まゐる。むゝ。（うなづく。）これ、角助。私（わし）がこれまでたび／＼申聞かせて置いたのを忘れたか。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) ／ 岡本綺堂(著)
其字が、野々宮さんの隠袋（ぽつけつと）から半分食（は）み出してゐた封筒の上書（うはがき）に似てゐるので、三四郎は何遍も読（よ）み直（なほ）して見た。
三四郎 (新字旧仮名) ／ 夏目漱石(著)
「お手紙（てがみ）の上書（うはがき）で覺（おぼ）えましたの……下郎（げらう）は口（くち）のさがないもんですわね。」と又（また）微笑（びせう）す。
艶書 (旧字旧仮名) ／ 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「その手紙は中は白紙でも、上書（うはがき）があるだらう。筆跡に心覺えはないのか」
銭形平次捕物控：119 白紙の恐怖 (旧字旧仮名) ／ 野村胡堂(著)
篤（とく）と改められし處歳の頃四十三四百姓（しやう）體（てい）の男にて身の内に疵（きず）三ヶ處頭上（づじやう）より頬（ほゝ）へ掛て切付し疵（きず）一ヶ所脊（せ）より腹（はら）へ突通（つきとほ）せし疵二ヶ所其脇（わき）に傘（からか）さ一本（ぽん）捨（すて）これ有其傘（からかさ）に澤瀉（おもだか）に岩と云字の印し付是あり懷中には鼻紙入（はながみいれ）に藥包（くすりつゝ）み一ツ外（ほか）に手紙一通あり其上書（うはがき）は
大岡政談 (旧字旧仮名) ／ 作者不詳(著)
お品（しな）は受取（うけと）つて、青（あを）い状袋（じやうぶくろ）の上書（うはがき）をじつと見（み）ながら、片手（かたて）を垂（た）れて前垂（まへだれ）のさきを抓（つま）むで上（あ）げつゝ、素足（すあし）に穿（は）いた黒緒（くろを）の下駄（げた）を揃（そろ）へて立（た）つてたが、一寸（ちよつと）飜（かへ）して、裏（うら）の名（な）を讀（よ）むと、顏（かほ）の色（いろ）が動（うご）いて
三尺角 (旧字旧仮名) ／ 泉鏡花(著)
「三州藤川在岩井村十兵衞殿返事江戸麹町三丁目村井長庵」右の通りの上書（うはがき）にて中の文言（もんごん）は「去二日出の書状到着（たうちやく）委細拜見致し候扨々其方にても屡々不如意（ふによい）との趣き蔭乍（かげなが）ら案事（あんじ）申候右に付御申越（こし）の娘出府（しゆつぷ）致されべく候吉原町にも病家（びやうか）も有レ之候間宜しき處を ...
大岡政談 (旧字旧仮名) ／ 作者不詳(著)