一斉いちどき)” の例文
旧字:一齊
はは、何か謂われると気に障ってうるさいな? 可いや、可いやお前になってみりゃ、盆も正月も一斉いちどきじゃ、無理はねえ。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片隅の美女の家へ、門背戸かどせどかけて、畳天井、一斉いちどきに、屋根の上の丘の腹まで運込みました儀でござったよ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ありったけの本箱をひっくり返したのと、知っただけのことば大絡おおまとめにしたのが、一斉いちどきに胸へ込上げて、咽喉のどつかえて、ぎゅうとも言えず、口はかずに、目は動く。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冬籠ふゆごもりの窓がいて、のきひさしの雪がこいがれると、北風に轟々ごうごう鳴通なりとおした荒海の浪のひびきも、春風の音にかわって、梅、桜、椿つばき山吹やまぶき、桃もすもも一斉いちどきに開いて、女たちのまゆ、唇
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最後に、肩とかしらと一団になったと思うと——その隊長と思うのが、つつおもてを背けました時——いらつように、自棄やけのように、てんでんに、一斉いちどき白墨チョオクを投げました。雪が群って散るようです。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四方へ引張つたつなが揺れて、鐘と太鼓がしだらでんで一斉いちどきにぐわんぐわらん、どんどと鳴つて、其でいちが栄えた、店なのであるが、一ツ目小僧のつたひ歩行ある波張なみばり切々きれぎれに、藪畳やぶだたみ打倒ぶったお
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……その時は、この山の下からの、土橋の、あの入江がや、もし……一面の海でござったがの、ごうと沖も空も鳴って来ると、大地も波も、一斉いちどきあおるように揺れたと思わっしゃりまし。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お分りになりにくうございましょうから。……一斉いちどきに、その何十人かの目が目ばかり出してじっと覗いたのです。みはる、またたく、ひとみが動く。……馬鹿々々しいが真個まったくです。睜る、瞬く、瞳が動く。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とほくに、行々子ぎやう/\しきしきつて、こゝにかはづがすだく——あひだを、わあーとつないで、屋根やねもんえないで、あの、遅桜おそざくらやまのうらあたり、学校がくかう生徒せいとの、一斉いちどき読本とくほん音読おんどくはすこゑ
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鐘と太鼓がしだらでんで一斉いちどきにがんがらん、どんどと鳴って、それでいちが栄えた、店なのであるが、一ツ目小僧のつたい歩行ある波張なみばり切々きれぎれに、藪畳やぶだたみ打倒ぶったおれ、かざりの石地蔵は仰向けに反って、視た処
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)