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ざんげつ
昨夜新嘉坡發、一
片の
長文電報は、
日本の
海軍省に
到達した
筈であるが、二
隻は
去る
金曜日をもつて、
印度大陸の
尖端コモリンの
岬を
廻り
錫崙島の
沖を
※ぎ、
殘月淡きベンガル
灣頭、
行會ふ
英、
佛
赤い
額、
蒼い
頬——
辛うじて
煙を
拂つた
絲のやうな
殘月と、
火と
炎の
雲と、
埃のもやと、……
其の
間を
地上に
綴つて、
住める
人もないやうな
家々の
籬に、
朝顏の
蕾は
露も
乾いて
萎れつゝ
しかし
残月であったんです。
何為かというにその日の
正午頃、ずっと上流の
怪しげな
渡を、綱に
掴まって、宙へ
釣されるようにして渡った時は、顔が
赫とする
晃々と
烈い
日当。