はづ)” の例文
わすれてゐることはないかとかんがへて見るが、萬事手はづとゝのつてゐる。そこで金太郎は、二時間といふわづかな時間をもてあましてしまふ。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
うちへ帰つて、一日いちにち部屋に這入つたなり考へ込んでゐた。あによめを連れて音楽会へ行くはづの所を断わつて、大いにあによめに気を揉ました位である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『いや、いや、如何どうかんがへても今時分いまじぶんあんなふねこの航路かうろ追越おひこされるはづはないのだ。』とる/\うち不安ふあん顏色いろあらはれてた。
なされてくださるはづもなしべつものにあそばすとりながらおうらみも申されぬ不束ふつゝかうらめしうぞんじますとホロリとこぼすひざつゆ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しもなんぢがそれに署名しよめいしなかつたとすれば』とつて王樣わうさまは、『尚々なほ/\わるい、なんぢ惡戯いたづら相違さうゐない、さもなければ正直しようぢき署名しよめいしてくべきはづだ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
一寸ちよいとつまづいても怪我けがをするのに、方角はうがくれないやまなかで、掻消かきけすやうにかくれたものが無事ぶじやうはづはないではないか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ラランはいつものやうに、カラカラとわらつた。五千メートル。いつもならこのへんるまでにつかれてちてしまうはづなのに、今度こんど莫迦ばか調子てうしがいい。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
それではきこえないからわからないはづです、それからまた蓄音器ちくおんきといふものが始めて舶来はくらいになりました時は、吾人共われひととも西洋人せいやうじん機械学きかいがくけたる事にはおどろきました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
年齡ねんれいも十六七以上いじやう、一とほ學問がくもんをして學問がくもん家政かせいなり、なになり日常にちじやう處世しよせいうへ應用おうようがしてけるはづでありますが、實際じつさいつきますると種々しゆ/″\遺憾ゐかんてんがあるやうです。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
全體ぜんたい杉村君すぎむらくんきみはづぢやアなかツたのか』と水谷氏みづたにしは一むくゐると、杉村氏すぎむらし楚人冠そじんくわんりう警句けいくけて『るならるが、ないのにつたつてつまらないよ』とる。
しかるに此一廻このひとまはりあひだ丁度ちやうど三百六十五日ならば千年も万年もおなじ暦にて差支さしつかへなきはづなれども、六十五日の上端うわはに六ときといふものありて毎年まいねんときづ〻おくれ、四年には四六二十四とき
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
此類このるゐの石器にしてはたして粉製こつくりの臺たらば、これたいする粉潰こつぶしの道具どうぐも有る可きはづなり。事實じじつ如何いかんと云ふに日向和田においては實際じつさい石皿と伴ふてこれ適合てきがふする橢圓石だゑんせき發見はつけんされしなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
うでなくつちや困るからね。小説だつておなじ事だらう、ねえ君。矢っ張りモローや、シヤヷンヌの様なのもゐるはづだらうぢやないか
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
造船所ざうせんじよない一部いちぶ貯藏ちよぞうされてあつたのだが、あゝ、昨夜さくや大海嘯おほつなみではその一個いつこ無事ぶじではるまい、イヤ、けつして無事ぶじはづはありません。
それは勿論もちろん正氣せうきひとからはちがひとえるはづ自分じぶんながらすこくるつてるとおもくらゐなれど、ちがひだとてたねなしに間違まちがものでもなく
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
が、たすはづだつた女房にようばうおぶつてなら……ふもと温泉をんせんまではおろかこと百里ひやくり二百里にひやくり故郷こきやうまでも、東京とうきやうまでも、貴様きさまからすくふためには、んでもかへるつもりでた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なん此程これほど見事みごとものがあらうぞや。それからまた——「フイと恁麽こんなになつたのも——」そんなになるはづはないが、え、なつたのではなからうが?』と女王樣ぢよわうさままをされました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
だいばんには大野氏おほのしはづだからとかんがへながら、なほいまいはや底部ていぶらしてやうとして、龕燈がんどう持直もちなほ途端とたんに、あし入口いりくちのくづれたる岩面いはづらんだので、ツル/\とあななかすべちた。
しかかんがへて見ればそんなものがあるはづはなかつた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
「そんな事が、あらうはづがない。いくら、かはつたつて、そりやたゞとしつた丈の変化だ。成るべくかへつて三千代さんに安慰を与へてれ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
我等われら兩人りようにん目指めざすコロンボにも、また櫻木海軍大佐等さくらぎかいぐんたいさら再會さいくわいすべきはづ橄欖島かんらんたうにも左迄さまではとほくない印度洋インドやうちうであつたことと。
それあまりのおとりこし苦勞ぐらう岩木いわきなかにもおもひのなきかは無情つれなおほせのはづなしさて御戀人おんこひゞと杉原すぎはらさまとやおなんとぞ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『そんなはづい。そんな、おまへ、』とたしなめるやうにひ/\飛上とびあがつたのであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
死刑執行者しけいしつかうしや論據ろんきようでした、それからはなさるべきからだがなければ、あたまることは出來できない、かつてそんなことをしたこともなければ、これからさきとても一生涯しやうがいそんなことらうはづがない。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
いそぐつて先月ぢうに越すはづの所を明後日あさつての天長節迄待たしたんだから、どうしたつて明日中あしたぢうさがさなければならない。どこか心当りはないか」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左樣さやうならばと挨拶あいさつすれば録之助ろくのすけかみづゝみをいたゞいて、お辭儀じぎまをはづなれど貴孃あなたのおよりくだされたのなれば、ありがた頂戴ちようだいしておもにしまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほねれるからとてだけうんのあるならばへられぬことはづをんななどゝものうも愚痴ぐちで、おふくろなどがつまらぬことすからこま
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「なに善意ぜんゐはらはないのは、文芸協会の方でも八釜敷やかましくは云はないはづだ。うせ幾何いくら切符が売れたつて、とゞのつまりは協会の借金になる事はあきらかだから」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其樣そのやうなつまらぬことはづい、おまへおもふてれるほど世間せけんしをおもふてれぬから、まあ安心あんしんしてるがいと子細わけことつれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
所が親爺おやぢの腹のなかでは、それが全く反対あべこべに解釈されて仕舞つた。なにをしやうと血肉けつにく親子おやこである。子がおやに対する天賦の情あひが、子を取扱ふ方法の如何に因つて変るはづがない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これはうもならぬそのやうに茶利ちやりばかりはですこ眞實しんところかしてくれ、いかに朝夕てうせきうそなかおくるからとてちつとはまことまじはづ良人おつとはあつたか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
骨が折れるからとてそれだけの運のある身ならば堪へられぬ事は無いはづ、女などと言ふ者はどうも愚痴で、お袋などがつまらぬ事を言ひ出すから困り切る
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これはどうもならぬそのやうに茶利ちやりばかり言はで少し真実しんの処を聞かしてくれ、いかに朝夕てうせきを嘘の中に送るからとてちつとは誠も交るはづ良人おつとはあつたか
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
可愛想かわいそうなことをとすこなみだくんでおさくをかばふに、それは貴孃あなた當人たうにんぬゆゑ可愛想かわいさうともおもふからねど、おさくよりはれのほうあはれんでくれてはづ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蒲團ふとんやの時代じだいからのみのをとこおもはなんだがあれこそは死花しにばな、ゑらさうにえたといふ、なににしろきく大損おほぞんであらう、には結搆けつこう旦那だんながついたはづ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れにちからおとさせまじとて八重やへつくろひてるにはあらずやや/\八重やへとして其樣そのやうのことあるはづなしひと
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
旦那だんなさまわらつて、あまこゝろつかぎた結果けつくわであらう、さへおちつければなほはづおつしやるに、いなそれでもわたしふにはれぬさびしい心地こゝちがするので御座ござります
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御同僚ごどうりよう奧樣おくさまがたのやうにおはなのおちやの、うたのとならてたこともなければ其御話そのおはなしの相手あいて出來できませぬけれど、出來できずは人知ひとしれずならはせてくださつてもむべきはづ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つと大事だいじほねさへらば御氣おきらぬことはづさだめて、かゝるおにしゆうをもつぞかし、目見めみえのみて三日ののち七歳なゝつになるじやうさまおどりのさらひに午後ごゞよりとある
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
勤め大事に骨さへ折らば御気に入らぬ事も無きはづと定めて、かかる鬼のしゆうをも持つぞかし、目見えの済みて三日ののち七歳ななつになる嬢さま踊りのさらひに午後よりとある
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
石之助いしのすけ其夜そのよはをとなしく、新年はる明日あすよりの三ヶにちなりとも、いへにていはふべきはづながら御存ごぞんじのしまりなし、かたくるしきはかまづれに挨拶あいさつ面倒めんどう意見いけんじつきゝあきたり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みね引出ひきだしたるはたゞまいのこりは十八あるべきはづを、いかにしけんたばのまゝえずとてそこをかへしてふるへども甲斐かひなし、あやしきは落散おちちり紙切かみきれにいつしたゝめしかうけとりつう
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何にしろ菊の井は大損であらう、かの子には結搆けつこうな旦那がついたはづ、取にがしては残念であらうと人のうれひを串談じようだんに思ふものもあり、諸説みだれて取止めたる事なけれど
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
正太は何故なにとも得ぞ解きがたく、烟のうちにあるやうにてお前はどうしても変てこだよ、そんな事を言ふはづは無いに、可怪をかしい人だね、とこれはいささか口惜くちをしき思ひに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
正太しようた何故なにともきがたく、はたのうちにあるやうにておまへうしてもへんてこだよ、其樣そんことはづいに、可怪をかしいひとだね、とれはいさゝか口惜くちをしきおもひに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だか未だかと正太はかどへ出つ入りつして、呼んで来い三五郎、お前はまだ大黒屋の寮へ行つた事があるまい、庭先から美登利さんと言へば聞えるはづ、早く、早くと言ふに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だかだかと正太しようたかどりつして、んでい三五らう、おまへはまだ大黒屋だいこくやりようつたことがあるまい、庭先にはさきから美登利みどりさんとへばきこえるはづはやく、はやくとふに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
洒落氣しやれげなしではられぬはづ勉強家べんきようかにしたは其自狂そのやけからかとおつしやるに、中々なか/\もちまして彼男あれ貴孃あなた自狂やけなどおこすやうなおとこ御座ござりましよか、無常むじやうさとつたので御座ござりますとふに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それでもあなたは一家の御主人さまに成りて采配さいはいをおとりなさらずは叶ふまじ、今までのやうなお楽の御身分ではいらつしやらぬはづと押へられて、されば誠に大難にひたる身とおぼしめせ。
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それでもあなたは一御主人ごしゆじんさまにりて釆配さいはいをおとりなさらずはかなふまじ、いままでのやうなおらく御身分ごみぶんではいらつしやらぬはづおさへられて、さればまこと大難だいなんひたるおぼしめせ。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)