いし)” の例文
ところで——番町ばんちやう下六しもろく此邊このへんだからとつて、いし海月くらげをどしたやうな、石燈籠いしどうろうけたやうな小旦那こだんなたちが皆無かいむだとおもはれない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二人ふたりは、そこでかなしいわかれをしました。びっこのむすめは、ひとり山道やまみちあるいてかえります途中とちゅうみちばたのいしうえこしをかけてやすみました。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、おもわずこえをだしたほどでした。ほこらのなかには、なんのへんてつもないいしころが、一つはいっているだけではありませんか。
こうひとごといながら、みちばたのいしの上に「どっこいしょ。」とこしをかけて、つづらをろして、いそいでふたをあけてみました。
舌切りすずめ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
大和やまとくにのある山寺やまでら賓頭廬樣びんずるさままへいてあるいしはち眞黒まつくろすゝけたのを、もったいらしくにしきふくろれてひめのもとにさししました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
しばらまつててゐるうちに、いしかべ沿うてつくけてあるつくゑうへ大勢おほぜいそうめしさいしる鍋釜なべかまからうつしてゐるのがえてた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
さて新石器時代しんせつきじだい人類じんるいはどういふふうな生活せいかつをしてゐたかといひますと、やはり舊石器時代きゆうせつきじだい人間にんげんおなじように、いしつたり
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
代助と軌道レールあひだには、つちいしんだものが、たかい土手の様にはさまつてゐた。代助ははじめて間違まちがつた所につてゐる事を悟つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『すると、あのいしをのいしやぢりや、あれ同時代どうじだい製作せいさくですか』といてると。『うです、三千ねんぜんのコロボツクル人種じんしゆ遺物ゐぶつです。 ...
よるになりました。こつそりでかけました。そしておどろきました。「なあんだ。こりやいしじやないか。ちえツ、馬鹿々々ばか/″\/″\しい」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
伯父をぢさんの金米糖こんぺいたうはげまされて、とうさんもいしころのおほ山坂やまさかのぼつてきましたが、そのうちにれかゝりさうにつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
町の小学校でもいしまきの近くの海岸に十五日も生徒せいとれて行きましたし、となりの女学校でも臨海りんかい学校をはじめていました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「さうですね、そのへんつてゐるやうなちひさないしでも、戦争後せんさうご物価ぶつかがちがひますからな、五六千円せんゑんはかゝるつもりでないと出来できません。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
いし散々さんざんにお神酒みきをいただいて行った形跡もあります。矢大臣の髯を掻きむしって行ったのもこのやからの仕業と覚しい。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「なんだ神田かんだの、明神様みょうじんさまいし鳥居とりいじゃないが、おまえさんもきがなさぎるよ。ありゃァただのお医者様おいしゃさま駕籠かごじゃないよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いた日暮ひぐれに寶田村を立出猿島さるしま河原まで來りしが手元のくらければ松明をともさんとて火打道具を見るに火打いしわすれたり是れより昌次郎はお梅を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すなは太古たいこ國民こくみんかならずしもいし工作こうさくして家屋かをくをつくることをらなかつたのではない。たゞその心理しんりから、これを必要ひつえうとしなかつたまでゞある。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
暑い日の昼下りから、紺色の日傘に、赤い髪を隠したお鳥はおいしという腹心の下女を一人れて、雑司ヶ谷の鬼子母神の境内へ入って来ました。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
かれは七十をえてもかみはまだいくらもしろくなかつた。かれいしかたまりしたやうなかた身體からだちかられてひと威勢ゐぜいづいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「そうじゃ。わしの あたまは いしじゃ。おまえの は さぞ いたかったろうと あいてを ながめ、あいてを あわれんで やるのじゃ。」
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
すると、このさるいしの河岸一帯に、どうして広がったものか、月見草が咲き出したのです。それから年々殖えて行く。
月見草 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
あしをばた/\やつて大聲おほごゑげていて、それでらず起上おきあがつて其處そこらのいしひろひ、四方八方にけてた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
まもなくあるせまい小路こうじへはいると、かれは往来のいしにこしをかけて、たびたびひたいを手でなで上げた。それはこまったときによくかれのするくせであった。
つる千年せんねんかめ萬年まんねん人間にんげん常住じやうぢういつも月夜つきよこめめしならんをねがかりにも無常むじやうくわんずるなかれとは大福だいふく長者ちやうじやるべきひと肝心かんじん肝要かんえうかなめいしかたつてうごかぬところなりとか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
或はぼうを以て打ち、或はいしけし事も有るべけれど、弓矢ゆみやの力をりし事蓋し多かりしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
都て不快な衝動しようどうあたへたにかゝはらず、しかも心には何んといふことは無く爽快そうくわいな氣が通ツて、例へば重い石か何んぞにせられてゐた草のが、不圖ふといしを除かれて
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そうして靴脱くつぬいしの上に鋏の大きな蟹が死んでいるのを見ると、学者たちを呼んでまいりました。
椰子蟹 (新字新仮名) / 宮原晃一郎(著)
しきつめたさざいしのうえを、牛車の厚いわだちが、邸内の奥ふかくまで、重々おもおもきしみ巡って来るまに
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何事なにごとぢゃこの血汐ちしほは、これ、この廟舍たまや入口いりくちいしめたこの血汐ちしほは? ぬしもないこのつるぎは? 此樣このやう平和へいわ場所ばしょまぶれにしててゝあるは、こりゃなんとしたことであらう?
かはいしふみわたりぬばたまの黒馬くろまつねにあらぬかも 〔巻十三・三三一三〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さるいしの渓谷は土えてよくひらけたり。路傍に石塔の多きこと諸国その比を知らず。高処より展望すれば早稲わせまさに熟し晩稲ばんとう花盛はなざかりにて水はことごとく落ちて川にあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すなわたい将来しょうらいくさいしひきがえるうちって、生活せいかつするとうことをもっなぐさむることが出来できる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかるに我国かつて火浣布くわくわんふつくるのいしさんす、そのる所は、○金城きんじやう山○巻機まきはた山○苗場なへば山○八海山はつかいさんその外にもあり。その石軟弱やはらかにしてつめをもつてもおかすべきほどのやはらなる石なり。
つめたいつきひかりされて、人目ひとめかゝらぬいしなか封込ふうじこめられた蟾蜍ひきがへるごとく、わがみにく鉱皮くわうひしためられてゐるとき、ほかのひとたちは清浄しやうじやう肉身にくしん上天じやうてんするのだらう。
越して来た頃、いしまきの女でおきみと云う非常に美しい女を女中に使っていた。二十一歳で本を読むことがきらいであったが、眼のキリっとした娘で、髪の毛が実に黒かった。
落合町山川記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
松並木まつなみききると、いしだたみのだら/\ざかがあつて、へんから兩側りやうがは茶店ちやみせならんでゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
イタリーの地形ちけい長靴ながぐつのようだとよくいはれてゐることであるが、その爪先つまさきいしころのようにシシリーとうよこたはつてをり、爪先つまさきからすな蹴飛けとばしたようにリパリ火山群島かざんぐんとうがある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それで人は道路を掃くこともできるしいしにすることもできるし、焚きつけを割ることもできるしろものであり、馭者はそれをたてにしてわが身と積荷とを太陽と風と雨とからかば
『それ、このに。』と武村兵曹たけむらへいそう紀念塔きねんたふかついではしたので、一同いちどうつゞいて車外しやぐわいをどで、日出雄少年ひでをせうねん見張みはりやくわたくしつちる、水兵すいへいいしまろばす、武村兵曹たけむらへいそう無暗むやみさけ
ハツ/\いえもう貴方あなた、年が年ですから死病しびやうなんでせう。金「おまへさん其様そんな気の弱い事をつちやアいけませぬ、いし獅噛附しがみついてもなほらうと了簡れうけんなくツちやアいけませぬよ。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そんな時の私達は、きっと、えりをかき合わせ、眉を寄せて寒空さむぞらを見上げているに相違ありません。庭の捨て石やかがいしのもとに植えられた福寿草は、よく自然の趣を見せてくれます。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
三十五反の帆を張りあげて行く仙台せんだいいしの巻とは、必ずしも唄空事うたそらごとの誇張ではない。
年老いたる番僧の露西亜人ろしあびとに導かれて、古寺こじの廃跡いし累々るゐ/\たるを見つゝ、小石階せうせきかいを下りて、穹窿きゆうりゆうの建物いと小さく低きが中に入る。内に井あり、口径三尺ばかり、石を畳むでふちとす。
 お城内の腕白共がフト迷い込んで出る道を忘れたあほう鳩を捕えて足にいしいつけては追ってよう飛ばぬ不様な形を見て笑って居るのをお見なされてその者達の所にお出なされて
胚胎 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
不図ふとがついてると、むかうのがけすこけずったところ白木造しらきづくりのおみや木葉隠このはがくれにえました。おおきさはやくけんほう屋根やねあつ杉皮葺すぎかわぶき前面ぜんめんいし階段かいだん周囲ぐるり濡椽ぬれえんになってりました。
いしみな奇状両岸に羅列す、あるい峙立じりつして柱のごとく、或は折裂せつれつして門のごとく、或は渇驥かっきの間に飲むが如く、或は臥牛がぎゅうの道に横たわる如く、五色ごしき陸離りくりとして相間あいまじわり、しゅんおおむね大小の斧劈ふへき
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
千田はこの臼井をかついで霊岸橋れいがんばしへ行って、辰馬丸に乗込んですぐ出てくれ。行先はいしまきだ、草枝はもんぺをはいてわしといっしょに来てくれ。松戸へ出てから、すこし歩くことにするからなあ
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
海老之丞えびのじょうがくたびれたように、みちばたのいしこしをおろしていいました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
いしが鈴木家へひきとられたのは正保しょうほう三年の霜月のことであった。
日本婦道記:墨丸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
欽慕きんぼあまついに右の文字をもいしこくしたることならん。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)