“戸(と)” の例文
だれが、その間(あいだ)にやってきてもあわないつもりで、入(い)り口(ぐち)の戸(と)を堅(かた)く締(し)めた。そして、豆(まめ)を袋(ふくろ)から出(だ)して、熱心(ねっしん)に算(かぞ)えはじめました。
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「其(その)代(かは)り小六(ころく)さん、憚(はゞか)り樣(さま)。座敷(ざしき)の戸(と)を閉(た)てて、洋燈(ランプ)を點(つ)けて頂戴(ちやうだい)。今(いま)私(わたし)も清(きよ)も手(て)が放(はな)せない所(ところ)だから」と依頼(たの)んだ。小六(ころく)は簡單(かんたん)に
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「きみ、ごまかそうとしたって、そうはいかないよ。あと骸骨(がいこつ)の戸(と)は五、六、七、八と四つあるじゃないか。早く開いて見せなさい」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
左(ひだり)へ折(お)れたところに応接室(おうせつしつ)か喫煙室(きつえんしつ)かといふやうな部屋(へや)の窓(まど)の戸(と)が少(すこ)しあいてゐて人影(ひとかげ)が差(さ)してゐたが、そこを過(す)ぎると玄関(げんかん)があつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
するとその晩(ばん)夜中(よなか)過(す)ぎになって、しっかりしめておいたはずのおもての戸(と)がひとりでにすうっとあいて、だれかが入(はい)って来(き)た様子(ようす)です。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それで其(そ)の一町(ちやう)四方(はう)は晝間(ひるま)も戸(と)を締(し)めたといふほど、ひどい臭氣(しうき)が、其(そ)の頃(ころ)の腐(くさ)つた人間(にんげん)の心(こゝろ)のやうに、風(かぜ)に吹(ふ)かれて飛(と)び散(ち)つた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
此時(このとき)家(いへ)の戸(と)が開(あ)いて、大(おほ)きな皿(さら)が歩兵(ほへい)の頭(あたま)の上(うへ)を眞直(まつすぐ)に、それから鼻(はな)の尖(さき)を掠(かす)つて、背後(うしろ)にあつた一本(ぽん)の木(き)に當(あた)つて粉々(こな/″\)に破(こわ)れました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
瀧(たき)を覆(くつがへ)すやうで小留(をやみ)もなく家(うち)に居(ゐ)ながら皆(みんな)蓑笠(みのかさ)で凌(しの)いだ位(くらゐ)、茅葺(かやぶき)の繕(つくろひ)をすることは扨置(さてお)いて、表(おもて)の戸(と)もあけられず、内(うち)から内(うち)、隣同士(となりどうし)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
船頭(せんどう)は闇(くら)い小屋(こや)の戸(と)をがらつと開(あ)けて又(また)がらつと閉(と)ぢた。おつぎは暫(しばら)く待(ま)つて居(ゐ)てそれからそく/\と船(ふね)を繋(つな)いだあたりへ下(お)りた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
へえ観音様(くわんおんさま)のうしろに……あなたは吉原(よしはら)の熊蔵丸屋(くまざうまるや)の月の戸(と)華魁(おいらん)ぢやアございませんか。女「おや何(ど)うしてわたしを御存知(ごぞんぢ)です。 ...
祖母(おばあ)さんの鍵(かぎ)は金網(かなあみ)の張(は)つてある重(おも)い藏(くら)の戸(と)を開(あ)ける鍵(かぎ)で、紐(ひも)と板片(いたきれ)をつけた鍵(かぎ)で、いろ/\な箱(はこ)に入(はひ)つた器物(うつは)を藏(くら)から取出(とりだ)す鍵(かぎ)でした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
川沿(かはぞひ)の公園(こうゑん)の真暗(まつくら)な入口(いりぐち)あたりから吾妻橋(あづまばし)の橋(はし)だもと。電車通(でんしやどほり)でありながら早(はや)くから店(みせ)の戸(と)を閉(し)める鼻緒屋(はなをや)の立(た)ちつゞく軒下(のきした)。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風、永井壮吉(著)
最も雨のひどく降る天気でも、戸内にいるというよりは戸(と)のうしろ——そこにわたしは坐ったのだが——にいる、という方があたっていた。
夕暮(ゆふぐれ)の薄(うす)くらきに迷(まよ)ふ心(こゝろ)もかき暮(くら)されて何(なに)と言(いひ)入(い)れん戸(と)のすき間(ま)よりさし覗(のぞ)く家内(かない)のいたましさよ頭巾(づきん)肩掛(かたかけ)に身(み)はつゝめど目(め)を
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「入江と、拙者とは、若いころ、戸(と)ヶ崎(さき)十松(じっしょう)の門で一緒に修業していたことがある。むろん、拙者の方が、はるかに末輩だが」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『屹度(きつと)間(ま)もなくお直(なほ)りでせう。』と、ニキタは復(また)云(い)ふてアンドレイ、エヒミチの脱捨(ぬぎすて)た服(ふく)を一纏(ひとまと)めにして、小腋(こわき)に抱(かか)へた儘(まゝ)、戸(と)を閉(た)てゝ行(ゆ)く。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すると こんどは、また べつの戸(と)がありました。その戸(と)を、ドンドンと たたくと、なかで、こんなことをいっているのがきこえてきました。
天(あま)の戸(と)渡(わた)る梶の葉に思ふこと書く頃も過ぎ、何時(いつ)しか秋風の哀れを送る夕まぐれ、露を命の蟲の音の葉末にすだく聲悲し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そこで彼(かれ)は小屋(こや)の前(まえ)に坐(すわ)りましたが、見(み)ると、戸(と)の蝶番(ちょうつがい)が一(ひと)つなくなっていて、そのために戸(と)がきっちり閉(しま)っていません。
だが親方(おやかた)、悪(わる)いこたァいわないから、滅多(めった)に戸(と)を開(あ)けるなァお止(よ)しなさいよ。そこを開(あ)けた日(ひ)にゃ、それこそ生皮(なまかわ)の匂(におい)で、隣近所(となりきんじょ)は大迷惑(おおめいわく)だわな
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
真赤(まっか)な火が目に映(うつ)ったので、おどろいて両方の目をしっかり開いて見たら、戸(と)だなの中じゅうが火になっているので、二度おどろいて飛び起きた。
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「たべものは手のとどかないところにしまっておき、透明人間が家の中にはいれないように、町じゅうの家が、戸(と)や窓(まど)にカギをかけておくことです」
晴(はら)すべしと其夜近所(きんじよ)合壁(がつぺき)の寢靜(ねしづま)りたる頃藤重が家に忍(しの)び行て見るに是は如何に何程(なにほど)開(ひら)かんとしても戸(と)は釘(くぎ)にて外(そと)より打(う)ち付(つけ)て有ば少しも開(あか)ず内の樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この見知(みし)らない小娘(こむすめ)を頭(あたま)ごなしに叱(しか)りつけてでも、又(また)元(もと)の通(とほ)り窓(まど)の戸(と)をしめさせたのに相違(さうゐ)なかつたのである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
門(もん)の戸(と)が開(あ)いたと思ふと小(ちひ)さな足音(あしおと)がして、いきなりお縁側(えんがは)のところで「さいなら!」などゝ言つてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
或は白木(しらき)の指物細工(さしものざいく)に漆(うるし)を塗(ぬり)てその品位を増す者あり、或は戸(と)障子(しょうじ)等を作(つくっ)て本職の大工(だいく)と巧拙(こうせつ)を争う者あり、しかのみならず、近年に至(いたり)ては手業(てわざ)の外に商売を兼ね
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それほどになさつても、なんの役(やく)にも立(た)ちません。あの國(くに)の人(ひと)が來(く)れば、どこの戸(と)もみなひとりでに開(あ)いて、戰(たゝか)はうとする人(ひと)たちも萎(な)えしびれたようになつて力(ちから)が出(で)ません
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
人間(にんげん)は勝手(かつて)なもので、私(わたくし)は前夜(ぜんや)は夜半(やはん)まで眠(ねむ)られなかつたに係(かゝは)らず、翌朝(よくあさ)は暗(くら)い内(うち)から目(め)が醒(さ)めた。五時(じ)三十分(ぷん)頃(ごろ)、櫻木大佐(さくらぎたいさ)は武村兵曹(たけむらへいそう)を伴(ともな)つて、私(わたくし)の部室(へや)の戸(と)を叩(たゝ)いた。
その近所(きんじょ)には今(いま)でも狐(きつね)や狸(たぬき)がいるそうで、冬(ふゆ)の夜(よる)など、人(ひと)が便所(べんじょ)にゆくため戸外(こがい)に出(で)るときには、戸(と)をあけるまえに、まず丸太(まるた)をうちあわせたり、柱(はしら)を竹(たけ)でたたいたりして
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
 伊達政宗卿(だてまさむねきやう)の御哥に「さゝずとも誰(たれ)かは越(こえ)ん関(せき)の戸(と)も降(ふり)うづめたる雪(ゆき)の夕暮(ぐれ)」又「なか/\につゞらをりなる道(みち)絶(たえ)て雪に隣(となり)のちかき山里」此君は御名たかき哥仙(かせん)にておはしまししゆゑ
入りて臥(ふ)しもして、又翌(あす)の日を待つべし、とあるに、否(いな)みがたく、母をすかして前(さき)に臥さしめ、もしやと戸(と)の外(そと)に出でて見れば、八二銀河(ぎんが)影きえぎえに、八三氷輪(ひようりん)我のみを照して淋しきに
一里半富海(とのみ)(一名戸(と)の海(み))駅なり。駅尽(つきて)山路にかかる。浮野嶢(うきのたうげ)といふ。すべる所、望む所、貞世紀行尽せり。山陽道中第一の勝景と覚ゆ。一里浮野駅。一里宮市駅。三倉屋甚兵衛の家に休す。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
……眼(め)よ、見(み)よ、これが最後(なごり)ぢゃぞ! 腕(かひな)よ、抱(だ)け、これが最後(なごり)ぢゃ! おゝ、息(いき)の戸(と)の脣(くちびる)よ、人(ひと)の命(いのち)を長永(とこしなへ)に買占(かひし)むる死(し)の證文(しょうもん)に天下(てんが)晴(は)れた接吻(せっぷん)の奧印(おくいん)せよ!……(毒藥の瓶を取り出し)さ、來(こ)い
波動(はどう)は甘(あま)く、また、緩(ゆ)るく、戸(と)に照りかへす
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なつかしきもの、胸(むね)の戸(と)に
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
後(しり)つ戸(と)よ い行き違(たが)ひ七
七番蔵(ばんぐら)の戸(と)のまへで
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
蘭麝(らんじや)馨(かを)れる閨(ねや)の戸(と)に
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
戸(と)を壓(あつ)して
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
すると、なにか鼻唄(はなうた)をうたいながら、小(ちい)さなくつの足音(あしおと)がして、つぎに、ご門(もん)の戸(と)が開(あ)きました。年(とし)ちゃんが、帰(かえ)ってきたのです。
年ちゃんとハーモニカ (新字新仮名) / 小川未明(著)
手(て)ランプも點(つ)けぬ卯平(うへい)の狹(せま)い小屋(こや)の空氣(くうき)は黒(くろ)く悄然(ひつそり)として死(し)んだ樣(やう)である。勘次(かんじ)は拔(ぬ)き足(あし)して戻(もど)つては出來(でき)るだけ靜(しづか)に戸(と)を閉(と)ぢる。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しばらく、雨(あめ)ながら戸(と)に敷(し)いたこの青(あを)い葉(は)は、そのまゝにながめたし。「晩(ばん)まで掃(は)かないで。」と、留(と)めたかつた。が、時節(じせつ)がらである。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
『それぢや、話(はな)しにならないわ』と愛(あい)ちやんは自棄(やけ)になつて、『何(なん)て、愚物(ばか)なんだらう!』と云(い)ひながら、戸(と)を開(あ)けた中(なか)へ這入(はい)りました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此間(このあひだ)生(うま)れた末(すゑ)の男(をとこ)の子(こ)が、乳(ちゝ)を呑(の)む時刻(じこく)が來(き)たものか、眼(め)を覺(さ)まして泣(な)き出(だ)したため、賊(ぞく)は書齋(しよさい)の戸(と)を開(あ)けて庭(には)へ逃(に)げたらしい。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と聞(き)きました。坊(ぼう)さんはこわごわ立(た)って、戸(と)をあけて、裏手(うらて)をながめますと、そこに深(ふか)い田(た)が出来(でき)ていて、水(みず)がいっぱいあふれていました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と云いながら立ち上り、ニヤリと笑ったなり次の間へ立ち、瀧(たき)の戸(と)という番頭新造とヒソ/\話を致して居りますので、どうも仕方がない。
けんめいに戸(と)を破(やぶ)ろうとして竹童(ちくどう)は、そこをうごかず、蛾次郎(がじろう)は、むちゅうになって、ほかの出口をさがしているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『きっと間(ま)もなくお直(なお)りでしょう。』と、ニキタはまた云(い)うてアンドレイ、エヒミチの脱捨(ぬぎすて)た服(ふく)を一纏(ひとまと)めにして、小腋(こわき)に抱(かか)えたまま、戸(と)を閉(た)てて行(ゆ)く。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
叩(たゝ)く者(もの)有(あり)偖(さて)は役人後を追來りしかど更に心も落付(おちつか)ず返事さへ碌(ろく)にせざれば表には又々(また/\)叩(たゝき)早く此處をお開下(あけくだ)されと云ふを聞けば女の聲なる故不思議(ふしぎ)に思ひ少(すこ)し戸(と)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふと 気(き)がつくと、羽(はね)のそばに、あげ戸(ど)があります。その戸(と)をあけてみると、かいだんがついています。