こうじ)” の例文
コシ 鹿児島附近ではかびこうじもともにコシといい、またいろいろの皮膚の病にもコシ・コセカキ・コシキヤマイという語がある。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その日も、夜まで飲み歩いて、殆ど、性もなく、木枯らしの中を落葉と一緒に飄々ひょうひょうと吹かれながら、平河天神からこうじ町のをあてに来ると
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その冷す間に麦芽もやしを入れてよくこれをき混ぜ、壺に入れてこうじを寝かすような具合にして三日位経ちますと、それが全く麹に変じてしまう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
両手にあまるほど肥えて石みたいに堅い。また こうじが少いからまずかろうけれど と小さな瓶から味噌をくれた。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
と、プリプリして筆幸の店を立ち出でた村井長庵は、ちょうどその時、お絃、右近の喧嘩屋一行の駕籠と同じ途を、こうじ町平河町の自宅へ帰路きろについていた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかしそういう皮肉な晩も、その後、事もなく明けはなれて、翌日の昼になった時に、こうじ町三番町のお狂言師の、泉嘉門の屋敷の庭で恋語りをしている男女があった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こまかな弱い降りで、人どおりの絶えた、暗いこうじ町の往来を、ひっそりと濡らしていた。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
パン種にも色々の製法があってよく麦酒びーるを混ぜる人もあります。白米とこうじで拵える法もあります。そんな事は先ず黒人くろうとの仕事で素人しろうとに不便ですから一番軽便な法を申上げましょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
憤慨と、軽侮と、怨恨えんこんとを満たしたる、視線の赴くところ、こうじ町一番町英国公使館の土塀どべいのあたりを、柳の木立ちに隠見して、角燈あり、南をさして行く。その光は暗夜あんやに怪獣のまなこのごとし。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こうじ何升に塩いくらと書いてあるから、読書力を利用してやればよろしい。
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
東京市こうじ町区内幸町武蔵野新聞社文芸部、長沢伝六。太宰治様侍史。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
同人は客を送りてこうじ町区はやぶさ町まで行きたる帰途、赤坂見附の上に差しかかりたるに、三十前後の盛装したる女に呼び止められ、華族女学校横まで連れ行かれ、金五円を貰い、新しき法被を着せられ
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
三河の宝飯ほい郡でトーゴというのだけはまだ説明が出来ぬが、千葉県印旛いんば郡でコウジバナといっているのは、葉の色花の形がこうじに似ていたからで
または売り、白粉おしろい売り、こうじ売りなどのひさから、一服一銭の茶売りおうなまでが“不毛を食う”散所民のうちだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
パンを焼くには第一にイースト即ちパンだねといってこうじのようなものがります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
やめてから矢の倉の鳥万、馬喰ばくろ町の平松、神田の翁屋おきなやと、勤めてはやめ勤めてはやめ、みんな三十日そこそこしか続かず、十六の春ようやく、こうじ町平河町の稲毛という店へ住込みでおちつきました
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こうじ町三番町——土屋多門の屋敷の一間。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
また、つたえ聞いた近郡の地頭や、郷士、法師らの献物けんもつもおびただしく、酒、こうじ、干魚、果物くだもの、さまざまな山幸やまさちが、行宮あんぐうの一部の板屋廂いたやびさしには山と積まれた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日その茄子を出して今の塩水の中へこうじを五合に芥子を二合五勺溶いて入れてかめの中へその水で茄子を漬け込んでよく攪き混ぜてよくならして紙を一枚載せて上等の酢をその紙へ振りかけます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
佐渡島では特に烏賊いかの塩辛だけをキリゴメというそうだが、これは塩とこうじと烏賊のわたとを合せたものへ、生烏賊を小さく刻んで入れ、瓶の中で醗酵させたものというから今の普通の製法とはちがい
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)