飲料のみもの)” の例文
旧字:飮料
資生堂の暖かそうな飲料のみものは、理窟りくつなしに捨ててしまって「違っているぞ」と承知しながら、その方へむかって歩みを運ぶのであった。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
少しく体を前へかがめると、飜筋斗もんどり打って転げちるであろう。う思うと、飲料のみものを用意していない彼はいよいかわきを覚えた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
食物くいものと云えば小鳥や果実このみ飲料のみものと云えば谷川の水、そうして冬季餌のない時は寂しい村の人家を襲い、鶏や穀物や野菜などを巧みに盗んで来たりした。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この様子では飲料のみもの吐血とけつをしそうにも思われないから、一息にあおりました。実はげっそりと腹も空いて。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とお雪は夫が買って来たミルク・フッドを茶碗ちゃわんに溶かして、さじを添えて持って来た。子供は香ばしそうな飲料のみものを一寸あじわったばかりで、あとは口を着けようともしなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
水菓子みずかし婦人達ふじんたちによつてちまはられたり、飲料のみものがれたりした。はなせるとおもつたSHなども、ちようどわたしそばにいて「むにはむがはなしはできない」とことわりをつていた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
灯を強みダリヤがつくるあざやけき陰に匂へるわれの飲料のみもの
秋草と虫の音 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
飲料のみものの茶碗には小さき羽虫の死骸浮び
呼子と口笛 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
飲料のみものがほしければはいりそうなものであるが、若い人の、歓楽境のようにされてるそうしたところへは、女人おんなはまず近よらない方がいいという、変な頑固がんこなものが
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
信州人ほど茶をたしなむ手合も鮮少すくなからう。ういふ飲料のみものを好むのは寒い山国に住む人々の性来の特色で、日に四五回づゝ集つて飲むことを楽みにする家族が多いのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
社交家しやこうかのM、H夫人ふじんが、私達わたしたちのためになに飲料のみものでも斡旋あつせんしやうとして、ボオイにはかつてみたけれど、今夜こんやさわぎなので、これといふものもなかつた。たゞ曹達水そうだすいがあるばかりであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
飲料のみもの茶碗ちやわんには小さき羽虫の死骸しがい浮び
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼女のほおは、暖炉や飲料のみもののためではなくカッと血の気がさした。それを見ると、わたしは気持ちがすがすがしくなって、お鯉は生ている、生作りのなますだと、急に聞く方も、ぴんとした。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
女の子は赤い草履ぞうり、男の子は白い緒の草履、お弁当はみんな揃えてお寿司すしの折詰を学校からあつらえ、お菓子や飲料のみもののことまで世話人をめたところが、あいにくその日は朝から曇って