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風引
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かぜひ
此美登利さんは
何を
遊んで
居る、
雨の
降るに
表へ
出ての
惡戯は
成りませぬ、
又此間のやうに
風引かうぞと
呼立てられるに、はい
今行ますと
大きく
言ひて、
其聲信如に
聞えしを
耻かしく
その妻は見るも
厭き夫の
傍に在る苦を片時も軽くせんとて、彼の
繁き
外出を
見赦して、
十度に
一度も色を
作さざるを
風引かぬやうに召しませ
猪牙とやらの
難有き賢女の志とも
戴き喜びて
取次ぐ
母が
詞も
待たず
儀右衞門冷笑つて
聞かんともせずさりとは
口賢くさま/″\の
事がいへたものかな
父親に
薫陶れては
其筈の
事ながらもう
其手に
乘りはせぬぞよ
餘計な
口に
風引かさんより
早く
歸宅くさるゝが
宜さゝうなもの
誠と
思ひて
聞くものは