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靜岡
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しづをか
此の
人ばかりには
限らない。
靜岡でも、
三島でも、
赤帽君のそれぞれは、
皆もの
優しく
深切であつた。——お
禮を
申す。
故郷は
靜岡の
流石に
士族出だけ
人品高尚にて
男振申
分なく、
才あり
學あり
天晴れの
人物、
今こそ
内科の
助手といへども
行末の
望みは十
指のさす
處なるを
と、
發着の
驛を
靜岡へ
戻して
繰ると、「や、
此奴は
弱つた。」
思はず
聲を
出して
呟いた。
靜岡着は
午前まさに
四時なのであつた。いや、
串戲ではない。
維新の
變に
彼れは
靜岡のお
供、これは
東臺の
五月雨にながす
血汐の
赤き
心を
首尾よく
顯はして
露とや
消えし、
水さかづきして
別れし
限りの
妻へ
形見が
此美人なり
と、
愚にもつかぬことをうつかり
饒舌つた。
靜岡まで
行くものが、
濱松へ
線路の
伸びよう
道理がない。