あい)” の例文
ぬすむなどと云卑劣ひれつ武士さふらひにあらず是にても疑ひははれぬかと云ふに久兵衞は大口おほぐちあい打笑うちわらひイヤサ盜人ぬすびとたけ/″\しいとは貴殿きさまの事なり此品々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
前があい膝頭ひざがしらが少し出ていても合そうとも仕ない、見ると逆上のぼせて顔を赤くして眼は涙に潤み、しきりに啜泣をている。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ガラス戸のあいているのも同じです。それから、僕自身は……オヤ、この鏡は変だぞ。僕の姿丈け、のけものにして、写してくれないのかしら。……ふとそんな気持になるのです。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ひじまくらに横に倒れて、天井に円く映る洋燈ランプ火燈ほかげを目守めながら、莞爾にっこ片頬かたほ微笑えみを含んだが、あいた口が結ばって前歯が姿を隠すに連れ、何処いずくからともなくまたうれいの色が顔にあらわれて参ッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
取れまいと云つゝ故意わざと見せびらかししか盜人どろぼうひまはあれども守人まもりてひまはなしとか云なりと大口おほぐちあいて打笑ひ其胴卷そのどうまき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
少女は此二階家の前に来ると暫時しばら佇止たちどまって居たが、窓を見上げて「江藤えとうさん」と小声で呼んだ、窓は少しあいていて、薄赤い光が煤にきばんだ障子に映じている。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ぬけろじの中程が恰度、麺包屋ぱんやの裏になっていて、今二人が通りかけると、戸が少しあいて居て、内で麺包を製造つくっている処が能く見える。其やきたてのこうばしいにおい戸外そとまでぷんぷんする。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)