金釦きんぼたん)” の例文
19の黒い制服には金釦きんぼたんが重要性をつけていた。すべてが巴里パリーからドライヴして来た人に相応ふさわしい「長いみちに狐色になったラフさ」
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
私は今日初めて明るい紫紺しこん金釦きんぼたん上衣うわぎを引っかけて見た。藍鼠あいねずみの大柄のズボンの、このゴルフの服はいささかはで過ぎて市中しちゅうは歩かれなかった。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
金釦きんぼたんをつけた守衛は、いつもの出口に立って帰る者のポケットや弁当箱を、両方から一人一人撫でまわした。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
インキのつぼを、ふらここのごとくにつて、金釦きんぼたんにひしやげた角帽かくばう、かまひつけぬふうで、薄髯うすひげあたらず遣放やりつぱなしな、威勢ゐせいい、大學生だいがくせいがづか/\とはひつてた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
金釦きんぼたんに赤鉢巻の帽子が、なるほどスマートに見えることもあるが、たま/\日曜日におろしたてのセルなど着込んで来ると、襟を抜き衣紋に、兵児帯を高々と締め
すべてを得るは難し (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
……かれ金釦きんぼたん制服せいふくだし、此方こつちはかまなしの鳥打とりうちだから、女中ぢよちう一向いつかうかまはなかつたが、いや、なにしても、くつ羊皮ひつじがは上等品じやうとうひんでも自分じぶんはうささうである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
金釦きんぼたんをつけた制服の園丁が、花の蔭から彼のすがたを見たけれど、とがめなかった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
続いて白筋の制帽となって、姉のおもい一つなんだ。かみわざで助けられるように、金釦きんぼたんの制服とぎつけた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
別嬪べっぴんが二人、木曾街道を、ふだらくや岸打つ浪と、流れて行く。岨道そばみちの森の上から、杓を持った金釦きんぼたん団栗どんぐりころげに落ちてのめったら、余程よっぽど……妙なものが出来たろうと思います。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)