ごおり)” の例文
十歳とおばかりの頃なりけん、加賀国石川ごおり松任まっとうの駅より、畦路あぜみちを半町ばかり小村こむら入込いりこみたる片辺かたほとりに、里寺あり、寺号は覚えず、摩耶夫人おわします。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
加州かしゅう石川ごおり金沢城の城主、前田斉広なりひろは、参覲中さんきんちゅう、江戸城の本丸ほんまる登城とじょうする毎に、必ず愛用の煙管きせるを持って行った。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
愛知県なんとかごおりなんとか村なん何兵衛なにべえの妹なにと云っているのは、若い女の声である。男は降りて行った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あさいごおりと、坂田ごおりのはんぶんと、いぬがみ郡とを所領にくだされ、江北のしゅごとなされました。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
武州入間ごおり赤尾村に、磯五郎という目明めあかしがあり、同時に賭場を開いていて、大勢の乾児こぶんを養っていた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
清水は昨夜から待て居るので万事の都合よろしく、その船宿に二晩ひそかとまって、れから清水の故郷武州ぶしゅう埼玉ごおり羽生村はにゅうむらまで二人を連れて来て、其処そこも何だか気味が悪いとうので
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
我家わがいえは北海道十勝国とかちのくに中川ごおり本別村ぽんべつむらあざ斗満の僻地に牧塲を設置し、塲内に農家を移し、力行りょっこう自ら持し、仁愛人を助くることを特色とし、永遠の基礎を確定したる農牧村落を興し
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
宗村は常陸から奥州へ所替ところがえになり、伊達ごおりやかたを構えて「伊達」を称してから、隠居した陸奥守綱宗までが十九代、原田家も与次郎から甲斐宗輔までが、同じく十九代であった。
国のうちの事やわしの身の上を申しやせんでしたが、もう年季通り勤め上げ、おいとまが出て国へけえるのも近いこんだから、お隠し申しやせんが、実は上州利根ごおり沼田下新田という所の百姓
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
俺は、土州安芸ごおり崎の浜の孫八と云う船頭じゃ、あと月の廿日の晩、この傍を
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこは陸前のくに柴田ごおりの、岩入というところで、左に白石川の流れが見え、その流れはいま、街道とはなれつつあるが、広い河原をわたって、川の瀬音はまだはっきり聞えて来た。
小川村の浪人の内へ行って名告なのり合せて見ると、向うも鹽原角右衞門、己も鹽原角右衞門、同じ名前なめえで不思議に思ったから、段々聞いて見ると、元は野州塩谷ごおり塩原村の者と分って見ると
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すでに阿部ごおりであるのだから語呂が合い過ぎるけれども、これは独語学者早瀬主税氏が、ここに私塾を開いて、朝からその声の絶間のない処から、学生がたわむれにしか名づけたのが、一般に拡まって
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
音「え岡田ごおりか……岡田郡羽生村という処だ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)