躍気やっき)” の例文
旧字:躍氣
小僧はませた口吻で、躍気やっきになってわめきながら、きゃっきゃっ笑い崩れた。許生員は我知らず、忸怩じくじと顔をあからめた。
蕎麦の花の頃 (新字新仮名) / 李孝石(著)
顔はあおざめ、躍気やっきとなり、肉をきざみ、掘る。指は、それ自身、血にまみれた傷口きずぐちだ。そして、そこから、釣針が落ちる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
むぞうさに言い消されて、婆は躍気やっきとなった。彼女は手真似をまぜてその時のありさまを詳しく説明した。その間に彼は幾たびか柴の煙りにむせた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それでもまだ、お寿々は、躍気やっきとかかって来るので、小脇に引っ抱えると、裏木戸から、寺の寺内へ抛り出した。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは駄目だと、なおも突っぱねると、向うは躍気やっきさ。こっちへ買い戻さねば親分に済まねえ。売らないというのなら手前は生かしちゃ置けねえとおどしやがる。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かの妓躍気やっきで、君は今堅い事のみ言うが、おのれかさずに置くべきか、していよいよ妾に堕された日は、何をくれるかと問うと、その場合には五馬を上げよう。
何百万倍も大きな図体ずうたいの彼奴等が躍気やっきとなっている、だから、この小さい俺達一人々々といえどもそれだけの「自負」を持って仕事をして行かなければならないと云った。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
誘いだした手紙。これが大師流のいい手跡でとても中間陸尺に書ける字じゃない。この手紙のぬしは誰だろうというんで、藤波は躍気やっきになってそいつを捜してる模様です
それを若林が躍気やっきになって、是非とも犯人を探し出してもらいたいと云ってヤイヤイ騒ぎ立てるために、ツイこんな事になってしまったんだが……とにかく吾輩は、そんな訳で
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私はそれより柳橋へでも繰り込んで、すいに遊ぼうと主張する。杉は躍気やっきになって
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
金太郎が躍気やっきになって籠に顔を押しつけるとロオラはいきなり最もグロテスクな嘴でそれに立向ったので、金太郎はびっくりして後退あとずさりをしました。ロオラは金太郎の狼狽ろうばいを見ると急に
オカアサン (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
はるかに身体からだ一つを投ずるは、他の家ならば知らず、この場合においては、いたずらに彼を悩ますの具となるに過ぎざることを知りければ、始めは固くいなみて行かざりしに、親族は躍気やっきになりて来郷を促し
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ソコで色々な策士論客忠臣義士が躍気やっきとなって、上方かみがたの賊軍が出発したから何でもれは富士川ふじがわで防がなければならぬとか、イヤうでない、箱根の嶮阻けんそよっ二子山ふたこやまの処で賊を鏖殺みなごろしにするが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
仁右衛門は躍気やっきとなって同じことを何十回となく繰返した。
鼓くらべ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
牝鶏めんどり躍気やっきになってそううのでした。子家鴨こあひる
婆さんも躍気やっきになって
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こね野郎!」と、にんじんは躍気やっきになって怒鳴どなる——「まだ死なねえか」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
にんじんは、躍気やっきとなり、またやり出す——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)