さん)” の例文
旧字:
明治神宮の用材をさんして、彬々ひんひんたるかな文質と云ふ農学博士あれば、海陸軍の拡張を議して、艨艟罷休もうどうひきうあらざる可らずと云ふ代議士あり。
この一枚もかくの如くしてまた書き塞げてしもうたので、例の通りさんを加えた。その歌は、おだまきの花には
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
描いて(あちら向きだから、かおは美しいか美しくないかわからないけれども、その姿から見て、美人といってもさしつかえなかろうと思われる)その左の一面にさんをして
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
相議するやひさし、余奮つて曰く、水をふて此嶮所けんしよを溯る何かあらん、未だ生命を抛つの危険きけんあるをずと、しふあへて余をさんするものなし、余此に於てやむを得ずかたく後説を
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
そこには薄墨で棒が一本筋違すじかいに書いてあった。その上に「この棒ひとり動かず、さわれば動く」とさんがしてあった。要するに絵とも字ともかたのつかないつまらないものであった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さんしているのを見ても、両者の間に、如何に深い道契どうけいがあったかが分ると思う。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしたら吉田さんが、速座に Il neige doucement sur la ville と仏蘭西フランス語でさんをした。私はいささ度胆どぎもを抜かれて「巧いものだなあ」とひどく感心した。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
客「然うでしょう、少し声がしゃがれてるし、一中節いっちゅうぶしったろう、あのーなにを唄ったろう……あれは端物はものだがいゝねえ、はなぶさちょう其角きかくさんをしたという、吉田の兼好法師の作の徒然草を」
『小日本』紙上には不折君の画に居士のさんをしたものが沢山に出た。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この魔術街マジツク・シテエの一部に新しく日本まちが出来た。永年欧米を廻つて居る櫛曵くしびきと云ふ日本人の興行師が経営してるさうだ。春日かすが風の朱塗門をはひると、日本画に漢詩や狂歌のさんのある万灯まんどうが客を中央の池へ導く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その時の正胤から半蔵に贈られたものである。本居宣長もとおりのりながの筆になった人麿ひとまろの画像もなつかしいものではあったが、それにもまして正香をよろこばせたのは、画像の上に書きつけてある柿本大人のさんだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つたない俳句のさんがあるのは悪かつたが、その粗画は沢山あるがことごとく月樵の筆であつて、しかも一々見てゆくと、一々にうまい趣向のある本を、或人に見せられたことがある。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
湯のなかに浮いたまま、今度は土左衛門どざえもんさんを作って見る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
抱一ほういつの画、濃艶のうえん愛すべしといへども、俳句に至つては拙劣せつれつ見るに堪へず。その濃艶なる画にその拙劣なる句のさんあるに至つては金殿に反古ほご張りの障子を見るが如く釣り合はぬ事甚だし。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)