いのこ)” の例文
御主人は時々振り返りながら、この家にいるのは琉球人りゅうきゅうじんだとか、あのおりにはいのこが飼ってあるとか、いろいろ教えて下さいました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お勢は今はなはだしく迷っている、いのこいだいて臭きを知らずとかで、境界きょうがいの臭みに居ても、おそらくは、その臭味がわかるまい。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
けれど旧約聖書のある部分やまたキリスト伝のほうでも、キリストが数千のいのこの群れを鬼に命じて殺すところなどは私は神の栄とは思われません。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
これ羊は死を聞いて懼れざるものなれば牛に易えよといいしなり。もししからずばいのこもて牛に易ゆとも妨げなけん、さはれ孟子は牛と羊の性を説かず。
尤も今では春秋の気候の好い時節には、松本市の中学校や女学校で生徒の遠足地としてよく登山するそうであるから、或は遼東のいのこたるそしりを免かれないかも知れぬ。
美ヶ原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その他肥えたるいのこあり、喪家そうかの犬のせたるあり。毛虫、芋虫、うじ百足むかで、続々として長蛇のごとし。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
果たしてとりの刻(午後五時—七時)を過ぎる頃に、荒園の草をふみわけていのこの群れがはいってきたので、一々に嚢をかぶせて捕えると、その数はあたかも七頭であった。
「つか」といふ字は冢塚にしていのこに点を打つなり。しかるに多少漢字を知る人にして※※の如く豕の上に一を引く人多し。されどぼうほう東韻とういんにして「つか」の字にはあらず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
鼻はいのこのごとく、目を縦にして、さながら土竜もぐらのごとく、軟毛全身に密生して、尾さき二つに裂けたる奇獣にて、顕微鏡にてこれを検すれば、毛さきに一種の異彩を放てり、云云うんぬん
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
ことに奈良朝以前には或る程度まで牧畜も行われて、いのこを飼育して食料に供したものであった。もちろん一般人民も自ら鳥獣を捕獲して、これを屠って喰うを忌まなかったのである。
いのこ同然の彼奴あいつ睦言むつごと……(訳注 おなじく。ただしこのくだり、チェーホフはかなり上品に言い直されたロシア訳を踏襲している。いま訳者は、シェイクスピアの原意に近い逍遥訳を採った)
久しく我らをいやしみたり、我らにささぐべきはずの定めのにえを忘れたり、う代りとして立って行くいぬ驕奢おごり塒巣ねぐら作れるとり、尻尾なき猿、物言う蛇、露誠実まことなき狐の子、汚穢けがれを知らざるいのこ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ハハそれじゃ遼東りょうとういのこであったか、やっぱりこんなに大きくて。」
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
さて衆神の書記たるトットがこれを諸神に告げるのだ。また第九図のごとくいのこかたどった悪人の魂を舟に載せて、もう一度苦労すべく娑婆しゃばへ送還する画もある。
遼東りょうとう白頭はくとういのこを珍しがりたる如く、屑屋先生は白菊を余り御覧なされぬ者と相見え候。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
黄いろいきものを着て、四人の従卒に舟を漕がせていましたが、その卒はみな青い服を着て、あかい髪を散らして、いのこのようなきばをむき出して、はなはだ怖ろしい形相ぎょうそうの者どもばかりでした。
目一つの神につかまった話だの、人をいのこにする女神めがみの話だの、声の美しい人魚にんぎょの話だの、——あなたはその男の名を知っていますか? その男は私にった時から、この国の土人に変りました。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いのこのような五、六匹の鼠がそのあとに従っていました。