謁見えっけん)” の例文
と、後醍醐のご記憶にも、彼の特有な人間臭が、忘れえぬものとしておありらしく、謁見えっけんの庭、夜の賜酒ししゅにも、道誉は加えられていた。
また二箇月目に徳川将軍に謁見えっけんして、用人席にせられ、翌年両番上席にせられた。仲平が直参じきさんになったので、藩では謙助を召し出した。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼が江戸の方へにげ帰ったあとで、彼に謁見えっけんした外国人もあるが、いずれも彼の温雅であって貴人の体を失わないことをほめないものはない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして参覲出府の式——国産の献上物を持って将軍に謁見えっけんすること——が済むとすぐ、正篤は軽い風邪をひいて寝た。
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
盗賊に大統領の親書を与え、国家の代表者として、日本皇帝陛下に謁見えっけんせしめたとあっては、巴里政界に大動揺を来すは勿論、由々しき国際問題です。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ロシアの港ビゼリポルガというところで皇帝に謁見えっけんを賜わった時分には、一行のうち六人のものはもう死んでいた。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「僕たちはいわば『あのかた』に謁見えっけんを許されているんだからね、道案内をしてくださるのはありがたいけれど、御いっしょにおはいりを願うわけにはいかんですよ」
彼の江戸に祇役しえきするや、松平定信に謁見えっけんし、その長門の内政を更革するや私淑ししゅくする所ありしという。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼が将軍綱吉に謁見えっけんを賜わったのが十三歳のときであり、綱吉もまた彼と同じ十三歳であったから、長ずるにつれてその信任はひと方ならぬものがあったというのも当然であろう。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
大佐は国王陛下マハラージャ謁見えっけんされましたが、太子殿下ラジクマールはその折ちょうど旅行で御不在でしたのでカムレッシ王女殿下クマーリがお逢いになりましたが、大佐は口を極めて王女殿下の美をたたえられました。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
骨を刺す寒夜ににわかの謁見えっけんだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
やがて、謁見えっけんの広間に、席をかえて、秀吉を待っていた信長は、ゆうべの信長とちがって、日常、諸侯に接しるとおりな信長であった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されどドレスデンの宮には、陶もののといふありて、支那シナ日本の花瓶はながめたぐいおほかたそなわれりとぞいふなる。国王陛下へいかにはいま始めて謁見えっけんす。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
半蔵が中津川まで迎えに行って謁見えっけんを許された東山道総督岩倉少将は、ようやく十六、七歳ばかりのうらわかさである。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
帰国祝いの式が済むと、二人は、早速のところ人払いの謁見えっけんを願い出た。
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その前に、高杉晋作が、はじめ佐久間象山に謁見えっけんした逸話がある。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
されどドレスデンの宮には、陶ものの間というありて、支那日本の花瓶はながめたぐいおおかた備われりとぞいうなる。国王陛下にはいまはじめて謁見えっけんす。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
正成をのこして、ついと謁見えっけん御座ぎょざをお立ちになってしまった御気色みけしきにみても、お腹立ちのほどは充分にうかがわれる。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一度は一代苗字みょうじ帯刀、一度は永代苗字帯刀、一度は藩主に謁見えっけんの資格を許すとの書付を贈られていたくらいだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは過ぐる安政あんせい四年、江戸の将軍謁見えっけんを許された後のハリスが堀田備中守ほったびっちゅうのかみの役宅で述べた口上の趣である。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかし、それを待っていられない問題だし、一刻も早くと思うので、織田、滝川の二人は、西の丸での謁見えっけんを、いて、小姓から秀吉の耳へ通してもらった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう家康は駿府すんぷ隠居いんきょしていたので、京都きょうとに着いた使は、最初に江戸えどへ往けという指図さしずを受けた。使はうるう四月二十四日に江戸の本誓寺ほんせいじに着いた。五月六日に将軍に謁見えっけんした。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さい閣下との対面は、例の白虎節堂びゃっこせつどうだった。ただし、関勝かんしょうひとりだけの謁見えっけんで、きざはしの下に、はいる。——蔡京がつらつら見るに、なるほどすばらしい偉丈夫だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにこの三日の間に、多人数の下役が来て謁見えっけんをする。受持ち受持ちの事務を形式的に報告する。そのあわただしい中に、地方長官の威勢の大きいことを味わって、意気揚々としているのである。
寒山拾得 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
信長との謁見えっけんは、正式でなかった。密使として、極くひそかに、一室で会ったのである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつてオルガンチノが初めて信長に謁見えっけんしたとき、土産物を献じた。その目録は
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが半農半武士に住みついて、蜂須賀名物の原士となり、軍陣の時は鉄砲二次の槍備えにあてられ、平時の格式は郷高取ごうたかとり、無論、謁見えっけんをもゆるされて、慓悍ひょうかんなこと、武芸者の多く出ることはその特色。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謁見えっけんいッぱい、ゆゆしい顔が居ながれていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いざどうぞ、ご謁見えっけんの方へ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)