諫止かんし)” の例文
この席は軍議の席であるが、その根本の目的に、異論や諫止かんしはゆるさぬ。ただ、その作戦上の範囲内で、何か、献策があらば聞こう。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お前が私に対する反抗的な気持からあまりにも向う見ずな事をしようとしているのを断然お前に諫止かんししなければならないと思った。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その際皇后が周囲の人々に諫止かんしせられる程度の熱意を示して、自らこの浴場に臨んで何事かをされたということもあり得ぬことではない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
船長は僕のこの向う見ずな考えを諫止かんししようとつとめたが、僕は高級船員の居候いそうろうを断わって、かの一室を独占することにした。
それを諫止かんししようとする寅吉に提灯をつけさせ、二階の梯子を下りて、表口の戸をあけて外へ出ました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
むげに諫止かんしすることもならず、だん/\同情するようになって策謀に引きずり込まれたのであろう。
なぜに一人前の教育ある紳士がその母の旧思想を説破し、その苛酷な干渉を諫止かんしして、夫婦の間の生活は専ら夫婦の間で決すべきものであることを宣明しなかったのであろう。
姑と嫁について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
出雲の阿菩大神あほのおおかみがそれを諫止かんししようとして出立し、播磨はりままで来られたころに三山の争闘が止んだと聞いて、大和迄行くことをやめたという播磨風土記ふどきにある伝説を取入れて作っている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
また、今度このたび長政が信長と絶縁せんとするや、到底信長に敵しがたきを知って極力諫止かんしせんとした。しかも、いよいよ手切れとなるや、単身敵陣に潜入して、信長を討たんことを決心す。
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
戦争未亡人になった、下の姉のとも子までが走りこんできて、涙とともに諫止かんしするという劇的な局面になった。そんなら死ぬだけだと突っぱると、キリスト教では自殺は最大の罪悪です。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
勅書などを発せんとする場合には、これを諫止かんしすべき職責を有するものである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
かたわらの人々は驚いた。急遽門弟を招集して評議した結果、翁の健康状態が許さぬ理由の下に翁を諫止かんししてしまった。万事に柔順な翁は、この諫止に従ったらしいがさぞかし残念であったろうと思う。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
諫止かんしするようでもあり、奨励するようでもある。しかし若旦那として使用人の掣肘せいちゅうを受ける必要はないと思った。もう決心をして機会を待っていた。この相場はかいだという直観が動いたのである。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なぜか諫止かんしすることも、それを敢行するだけの成算があるのかないのか、細い事なども、訊ね出せない気もちに打たれてしまった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その中にも武部小四郎氏は、静かに涙を払って少年連を諫止かんしした。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのほか、幾多の悪条件をかぞえて、極力、道誉も諫止かんしした。けれど、尊氏はいぜん、うなずく風もなかった。——ただ一ト言、考えてみる、といっただけである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうきめて、彼はまぶたをとじた。おもておかして諫止かんしするからには、多少、光秀から気まずい激語をうけようとも、いかに立腹されようとも、断乎だんことして、そのたもとを抑えきろう。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桃井直常をはじめ、斯波しば高経も上杉定朝も、口をきわめて、直義ただよし諫止かんしした。——直義も帰る気はない。すでに越前の金ヶ崎城に入って、自分の行動は遠近にひびいている。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい。まったくは、せつにご諫止かんし申しあげたいところです。しかし今さら、お取り止めもなりますまい。……どうも是非なき次第、楊志ようしも観念して参ることにいたしましょう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「孔明に出しぬかれた! いざ来い、打ち揃って、直ぐさま君をご諫止かんしせねばならん」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先頃、陶謙に頼まれて、曹操の侵略を諫止かんしせんと、説客せっきゃくにおもむいたが、かえって曹操に一蹴されて不成功に終ったのを恥じて、徐州に帰らず、そのままこの張邈ちょうぼうの許へ隠れていた彼だった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、極力諫止かんししたというのである。——理由は
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
辛毘は、諫止かんしした。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)