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たぶらか
ふりがな文庫
“
誑
(
たぶらか
)” の例文
何
(
なん
)
だ、
又
(
また
)
これを
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
るほどなら、
誰
(
たれ
)
が
命
(
いのち
)
がけに
成
(
な
)
つて、
這麼
(
こんな
)
ものを
拵
(
こしら
)
へやう。……
誑
(
たぶらか
)
しやあがつたな!
山猫
(
やまねこ
)
め、
狐
(
きつね
)
め、
野狸
(
のだぬき
)
め。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
かの女は感覚に
誑
(
たぶらか
)
されていると知りつつも、青年のあとを追いながら明るい淋しい楽しい気持になるのをどうにも仕様がなかった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其の様を見るに三尺児と
雖
(
いへど
)
も
猶
(
なほ
)
弁ずべきを、頑然首を差伸べて来る。古狸
巧
(
たくみ
)
に人を
誑
(
たぶらか
)
し、其極終に昼出て児童の獲となること、古今の笑談なり。
大衆維新史読本:07 池田屋襲撃
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
どうかして、再び兵馬さんの心を、その女から取り戻さなければならないが、あちらは人を
誑
(
たぶらか
)
すことを商売にしている人。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
神戸氏は鳥渡
誑
(
たぶらか
)
されたような気がした。彼は支倉のしょげ切った姿から眼を離して、庭前をチラリと見やった。夕闇に丁字の花が白く浮んでいた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
▼ もっと見る
真に我々の魂に迫るものは、かえって抽象論理を以て我々を
唆
(
そその
)
かすものでなければならない、真理の仮面を以て我々を
誑
(
たぶらか
)
すものでなければならない。
絶対矛盾的自己同一
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
誑
(
たぶらか
)
されるやうにして誑し、一気に引かけて、又慣らしながら、ためつゆるめつ争ふところに、竿釣りの焦点がある。
夏と魚
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
「わたし、
主馬之進
(
しゅめのしん
)
を殺す
意
(
つもり
)
なのだよ! お父様を殺し、お母様を
誑
(
たぶらか
)
し、荏原屋敷を乗っ取って、わたしたち二人を家出させた、極悪人の主馬之進をねえ」
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
宿屋へ運んだように見せかけたのは警察を
誑
(
たぶらか
)
す
陥穽
(
わな
)
であった。犯人はたしかにまだあの僧院の中に隠れている。死にそうになっている病人をそんなに運び出せるものではない。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
彼が出没して行人を
誑
(
たぶらか
)
したといふ青山の坂道は、今日でも団九郎坂と呼ばれてゐる。
日本の山と文学
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
お前は実に危険な立場にある。お前は幻に
誑
(
たぶらか
)
されてゐる。事実、お前は
死霊
(
しりょう
)
の祟りを
父八雲を語る
(新字新仮名)
/
稲垣巌
(著)
戸台から東駒へ登った際にも、途中で尾根を一つ
踰
(
こ
)
えなければならぬと思っていたのが、尾根を登り詰めるとそこが頂上だったので、嬉しくもあり
又
(
また
)
狐にでも
誑
(
たぶらか
)
されたような感がないでもなかった。
思い出す儘に
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「えい 何時まで
誑
(
たぶらか
)
されておれるかい」
アンチの闘士
(新字新仮名)
/
今村恒夫
(著)
この鏡を相手ならこんと鳴真似して女の質の中なる
野狐
(
やこ
)
の性を出しさえしたらわれとわれを
誑
(
たぶらか
)
すことくらいは、そんなに難しい仕事ではございません。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
老獪
(
ろうかい
)
なA——氏は私達の計画に
誑
(
たぶらか
)
されはしたが、
尚
(
なお
)
幾分の疑を抱いて一方木村探偵に相談すると共に、上下に一枚
宛
(
ずつ
)
真物
(
ほんもの
)
の百円紙幣を挟んだ紙束を私に呉れたのだった。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
恁
(
か
)
う
成
(
な
)
ると、
最
(
も
)
う
外聞
(
ぐわいぶん
)
なんぞ
構
(
かま
)
つては
居
(
ゐ
)
られない。
魅
(
つま
)
まれたか
誑
(
たぶらか
)
されたか、
山路
(
やまみち
)
を
夢中
(
むちゆう
)
で
歩行
(
ある
)
いた
事
(
こと
)
を
言出
(
いひだ
)
すと、
皆
(
みな
)
まで
恥
(
はぢ
)
を
言
(
い
)
はぬ
内
(
うち
)
に……
其
(
そ
)
の
若
(
わか
)
い
男
(
をとこ
)
が
半分
(
はんぶん
)
で
合点
(
がつてん
)
したんです。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「残念ながら我々は
誑
(
たぶらか
)
された。」と警部が呟いた。「あの銃声も火事もみんな我々の警戒を破るためだったのです。我々がその方に気をとられている間に、奴らは仕事をしていったのです。」
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
不快なことではなかつたが、
誑
(
たぶらか
)
されてゐる思ひがした。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
“誑”の解説
誑 (おう)(sa: māyā、マーヤー)は、仏教が教える煩悩のひとつ。
欺瞞。自分だけの利益や世間の評判(名聞利養)を得ようとして、様々なはかりごとを心に秘めて、自分が徳のある人物であると見せかける偽りの心である。
説一切有部の五位七十五法のうち、小煩悩地法の一つ。唯識派の『大乗百法明門論』によれば随煩悩位に分類され、そのうち小随煩悩である。
(出典:Wikipedia)
誑
漢検1級
部首:⾔
14画
“誑”を含む語句
欺誑
誑惑
斗秤欺誑人
誑惑癖
誑死