薔薇さうび)” の例文
まだ巣ごもり居て、薔薇さうびの枝の緑の葉をついばめども、今生ぜむとする蕾をば見ざりき。二月三月の後、薔薇の花は開きぬ。
雨に打ち砕かれて、はては咲かなくなつて居た薔薇さうびが、今朝はまたところどころに咲いて居る。蜘蛛くもの網は、日光を反射する露でイルミネエトされて居た。
しみじみと身に染みるもの、油、香水、痒ゆきところに手のとどく人が梳櫛すきぐし。こぼれ落ちるものは頭垢ふけと涙、湧きいづるものは、泉、乳、虱、接吻くちづけのあとのおくび、紅き薔薇さうびの虫、白蟻。
第二真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
信吾を見ると、『。』と抑へた様な声を出して、膝をついて、『ようこそ。』と言ふも口の中。信吾はそれに挨拶をし乍らも、頭を下げた清子の耳の、薔薇さうびの如く紅きを見のがさなかつた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
恋すればうら若ければかばかりに薔薇さうびの香にもなみだするらむ
芥川竜之介歌集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いま如何いかならんかの暗き庭隅にはすみの菊や薔薇さうびや。されどわれ
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
そは、かずかずの薔薇さうび打顫うちふるふいみじき花の姿を
失楽 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
薔薇さうびの、罌粟けしうまし花舞ひてぞ過ぐる
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
薔薇さうび一輪 風吹けばうなじ動かし
山果集 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
愛執あいしふ薔薇さうびにおとす。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
百合花ゆり薔薇さうびあらゝぎ
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
いにしへは此村薔薇さうびに名あり。見渡す限りくれなゐの霞におほはれたりしよし物に見えたれども、今は一株をだに留めず。身邊すべて是れ緑にして、其色遙に山嶽につらなれり。
彼自身で手入れをしてやつた日かげの薔薇さうびの木は、それに覆ひかぶさつて居た木々の枝葉を彼が刈り去つて、その上には日の光が浴びられるやうになつた後、一週間ばかり経つと
しみじみと身に染みるもの、油、香水、痒ゆきところに手のとどく人が梳櫛すきぐし。こぼれ落ちるものは頭垢ふけと涙。湧きいづるものは、泉、乳、虱、接吻くちつけのあとのおくび、紅き薔薇さうびの虫、白蟻。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すがれたる薔薇さうびをまきておくるこそふさはしからむ恋の逮夜は
芥川竜之介歌集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
白日はくじつ薔薇さうびの花に射かへすとき
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
つぼにして影ぞおぼめけ盛る色の薔薇さうびとを見れば薔薇さうびとし見ゆ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さて、ここに幾株かの薔薇さうびがこの庭の隅にあつた。
おもひもいでず薔薇さうびさへ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
かくまでも心のこるはなにならむあか薔薇さうびか酒かそなたか
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一叢ひとむら薔薇さうびは、かしこ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
君なくして 何の薔薇さうび
佐藤春夫詩集 (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
日は麗ら薔薇さうびあまりに色あかしわつと泣かむと思へどもわれ
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うつろへる薔薇さうびの歌と
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
南風薔薇さうびゆすれりあるかなく斑猫はんめやう飛びて死ぬる夕ぐれ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
薔薇さうびみやとなづけつつ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
野茨のいばらはいとどしろきにかさ厚き薔薇さうびは濡れて肉いろの花
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
薔薇さうびだつ緑ひとつら
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
野茨のいばらはいとどしろきにかさ厚き薔薇さうびは濡れて肉いろの花
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
子らよ、そは、ああ、その薔薇さうび
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
摘まれにき、われらが薔薇さうび
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
薔薇さうび薔微さうび、あてなる薔薇さうび
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ああ、薔薇さうび、暮れゆく今日けふ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
凋みにき、われらが薔薇さうび
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
火に焼くる薔薇さうびのにほひ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)