若狹わかさ)” の例文
新字:若狭
「八、此處は路地の奧で何處からも見えまいと思つたら、横田若狹わかさ樣邸内の火の見やぐらから一と眼だね。——昨夜は暗くて氣が付かなかつたが——」
武弘たけひろ昨日きのふむすめと一しよに、若狹わかさつたのでございますが、こんなことになりますとは、なん因果いんぐわでございませう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かくてタケシウチの宿禰がその太子をおつれ申し上げてみそぎをしようとして近江また若狹わかさの國を經た時に、越前の敦賀つるがに假宮を造つてお住ませ申し上げました。
料理のことに明るい人の思ひ出として、ある雜誌の中で讀んだ若狹わかさの魚商人の話なぞもその一つだ。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
るうちに、ひとつが、ぱつとえるかとおもふと、たちまち、ぽつと、つゞいておなかたちあらはれます。えるのではない、かすかえる若狹わかさみさきごとしろつてぶのです。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかし武内宿禰たけのうちのすくねだけは、お小さな天皇をおつれ申して、けがはらいのみそぎということをしに、近江おうみ若狹わかさをまわって、越前えちぜん鹿角つぬがというところに仮のお宮を作り、しばらくの間そこに滞在たいざいしておりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
平次はガラツ八を鞭撻べんたつして、吉田一學の屋敷と、一學の娘百枝もゝえの嫁入り先、金助町の園山若狹わかさの屋敷を探らせました。
はい、あの死骸しがい手前てまへむすめが、片附かたづいたをとこでございます。が、みやこのものではございません。若狹わかさ國府こくふさむらひでございます。金澤かなざは武弘たけひろとしは二十六さいでございました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夕方路地を入つた人間を一々覺えて居る人はあるまいからいても無駄だ。庭から裏へ拔けると路地を通つて横町へバアと出る。左手は横田若狹わかさ樣のへいか、五千五百石の御旗本だ。
「親分さん——とゝさんの出入りの御屋敷でお目見得以上といふと、三軒しかありません。一軒は金助町の園山若狹わかさ樣、一軒は御徒おかち町の吉田一學樣、あとの一軒は同朋町どうぼうちやうの篠塚三郎右衞門樣」