芍薬しやくやく)” の例文
旧字:芍藥
迂生事うせいこと、昨年七月より近郊にて(現今のところ)約六反歩たんぶの土地つき家屋を借受け、昨秋切花用として芍薬しやくやく二千株程植付け候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
母に頼んで五せん程の支出をして貰ひまして菊の花の二三本、春なら芍薬しやくやくの一つぐらゐを持つて行くやうな人ばかりでしたが
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しづかな山の手の古庭に、春の花は支那の詩人が春風二十四番と数へたやう、梅、連翹れんげう、桃、木蘭、藤、山吹、牡丹、芍薬しやくやくと順々に咲いては散つて行つた。
花より雨に (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
県下第一の旅館の玄関、芍薬しやくやくと松とをけた花瓶、伊藤博文いとうひろぶみ大字だいじがく、それからお前たちつがひの剥製はくせい……
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
牡丹の大株にも見紛ふ、この芍薬しやくやくは周囲の平板な自然とは、まるで調子が違つてゐて、由緒あり気な妖麗な円光を昼の光の中に幻出しつゝ浮世離れて咲いてゐた。
小町の芍薬 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
んだやうな夜気やきのなかに、つて、ひとりきて、はなをかけた友染いうぜんは、被衣かつぎをもるゝそでて、ひら/\とあをく、むらさきに、芍薬しやくやくか、牡丹ぼたんか、つゝまれたしろがねなべ
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なかには日本の藤の花を咲かせ、芍薬しやくやく石竹せきちくのたぐひを植ゑてゐる。かへでの葉が紅くのび、ぼけの木があり、あやめがある。これは個人の経営だが私にはやはり心を引くものがあつた。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
今年ことし芍薬しやくやくが早いとか、茶摘歌ちやつみうたいてゐるとねむくなる時候だとか、何所どことかに、大きなふぢがあつて、其花の長さが四尺らずあるとか、はなし好加減いゝかげんな方角へ大分だいぶ長くびてつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
牡丹ぼたん芍薬しやくやくやまざくら
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
されど日本現代の小説中、柔術の妙を極めし主人公は僅に泉鏡花いづみきやうくわ氏が「芍薬しやくやくの歌」の桐太郎きりたらうのみ。柔術もまた予言者は故郷にれられざるの歎無きを得んや。好笑かうせう好笑。(二月十日)
芍薬しやくやくやつくゑの上の紅楼夢こうろうむ
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
つつじ、芍薬しやくやくふぢ蘇枋すはう
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
芍薬しやくやくこそは真赤まつかなれ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
大きい真赤まつか芍薬しやくやく
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)