自然おのづから)” の例文
女なれば髪の毛ををしむならんと毛をゆびにからみてりしに、自然おのづからふところに入りて手にとゞまらず。とかくしてりをはり、わづかすこしの毛はやうやくとりとゞめつ。
あきなひ仕つり候と申立るを大岡殿季節の商賣と云ふは何をうりて渡世に致候やと申されしかば夏はうり西瓜すゐくわもゝるゐあき梨子なしかきの類など商賣仕つると申せども自然おのづから言語ごんごにごるゆゑイヤ其方家内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
云ふべきかたも無く静なれば、日比ひごろ焼きたる余気なるべし今薫ゆるとにはあらぬ香の、有るか無きかに自然おのづから匀ひを流すもいとく知らる。かゝる折から何者にや、此方を指して来る跫音す。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
いたく我が娘は叔母の娘に勝りたれば、叔母も日頃は養ひ娘の賢き可愛いとしさと、うみむすめ自然おのづからなる可愛いとしさとに孰れ優り劣り無く育てけるが、今年は二人ともに十六になりぬ、髪の艶、肌の光り
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ひさ駿河屋するがや三郎兵衞と云者ありしが此方こなた新規しんき小見世こみせいひむかふは所に久しき大店なれば客足きやくあし自然おのづからむかふへのみ行勝ゆきがちなれども加賀屋よりもをりにふれては代呂物しろもの融通等ゆうづうとうもなし出入邸でいりやしきあきなひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あたひ高下かうげおよそはさだめあれども、その年々とし/″\によりてすこしづゝのたがひあり。市の日にその相場年の気運きうんにつれて自然おのづからさだまる。相場さうばよければ三ばんのちゞみ二ばんにのぼり、二ばんは一ばんにくらゐす。
戸外おもてへ伴ひ出し保養ほやうをさせて下されといへば忠兵衞心得て主個あるじの前を退出まかりいでけり其年もはや彌生の初旬木々きゞこずゑはな咲出さきいで徐々そよ/\と吹く春風も自然おのづからなる温暖さ然ども息子せがれ長三郎は例の如く籠りゐる障子しやうじ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)