胴巻どうまき)” の例文
旧字:胴卷
すると甚内は云わない先に、わたしの心を読んだのでございましょう、悠々と胴巻どうまきをほどきながら、の前へ金包かねづつみを並べました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
狼狽ろうばいの極、胴巻どうまきとまちがえて小猫を抱いたり、振分けのつもりで炭取りをさげたり……いや、なんのことはない、まるで火事場のさわぎ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ズル/\ツと扱出こきだしたは御納戸おなんどだかむらさきだか色気いろけわからぬやうになつたふる胴巻どうまきやうなもの取出とりだしクツ/\とくとなかから反古紙ほごがみつつんだかたまりました。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼はそれを犢鼻褌ふんどしのミツへはさんでいるか、または胴巻どうまきへ入れてへその上に乗っけているか、ちゃんと見分ける女なんだから、なかなか油断はできないよ
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
平生ふだんから少し慾の深い伊作は、赤児を包んでいる美しいきれを解いて見ました。すると、赤児の腹のところに、三角にくけた胴巻どうまきが巻きつけてありました。
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
源太夫が家内の者の話に、甚五郎はふだん小判百両を入れた胴巻どうまきはだに着けていたそうである。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかしながら、夕方近くなって、大抵一廻りすんだ頃には、例のごとく、もとの気分に返って、膨れた財布を胴巻どうまきに入れ、少し得意を増さねばいかんと思い、心当りの家々を訪れて頼んで歩いた。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
場金を掻き集めて胴巻どうまきに入れてしまい
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ウフ……両掛りやうがけ莨入たばこいれつてつても、肝心かんじん胴巻どうまきを忘れてきやアがつた、なんでも百りやうからるやうだぜ、妻「うも本当に奇妙きめうだね、主「おやまたかへんなすつた。 ...
(和)茗荷 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いくらからうとしたが小出こだしの財布さいふにおあしがありませんから紺縮緬こんちりめん胴巻どうまきの中から出したは三りやう、○
たけは四寸二分で目方も余程あるから、慾の深い奴はつぶしにしても余程のねうちだから盗むかも知れない、厨子ずしごと貸すにより胴巻どうまきに入れて置くか、身体に脊負せおうておきな
昨夜ゆふべまへさんにあづけた、アノ胴巻どうまきしてんな。主「はい/\此品このしな御座ございますか。客「イヤこれを忘れちや大事おほごとだ、アヽ有難ありがたい、はい左様さやうなら。主「ア、つちまつた。 ...
(和)茗荷 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)