胴体どうたい)” の例文
旧字:胴體
いわば胴体どうたいがなくって、足からすぐ首が生えているように見えた。その大きな頭は、まるでつり合いもなにもとれていなかった。
この首と胴体どうたいとのあいだはせまい通路になっているので、その通路へ一番精巧せいこうな二つのわなをうめ、そのわなのはし牝牛めうしの首に結びつけた。
源兵衛は、うム! おめくと同時に、およぐように前面へのめってバッタリ、右近の言った通り、胴体どうたいが二つに開いて……。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ぐるぐる巻きにしばられた大コウモリの胴体どうたいから、あの老猟師に変装したままの二十面相の首がはえているのです。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
而して彼は其処に催うされて居る宴会の席に加わった。夢見る彼は、眼を挙げてずうと其席を見渡した。手足てあし胴体どうたいは人間だが、顔は一個として人間の顔は無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この声もろともに、パッと血煙が立つと見れば、なんという無残むざんなことでしょう、あっという間もなく、胴体どうたい全く二つになって青草の上にのめってしまいました。
俎板まないたの上で首を切られても、胴体どうたいだけはぴくぴく動いている河沙魚かわはぜのような、明瞭はっきりとした、動物的な感覚だけが、千穂子の脊筋せすじをみみずのように動いているのだ。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
二人はならんで馬を歩ませていた。父は何やらしきりに彼女に話しかけながら、胴体どうたいをすっかり彼女の方へかたむけ、片手を馬の首についていた。父は微笑びしょううかべていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
親仁おやぢおほい苛立いらだつて、たゝいたり、つたり、うま胴体どうたいについて二三ぐる/\とはつたがすこしもあるかぬ。かたでぶツつかるやうにして横腹よこばらたいをあてたときやうや前足まへあしげたばかりまたあし突張つツぱく。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
胴体どうたいも、手も、足も、黒い鉄の輪が、何十となく、かさなりあったような形をしています。ですから、鉄でできていても、自由自在に、がるらしいのです。大きな鉄のくつをはいています。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
度目どめ出会であつたのが、いやきふにはうごかず、しか胴体どうたいふと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)