胡椒こしょう)” の例文
右の拇指おやゆびの爪の垢から胡椒こしょうの粉が発見されたんですけれど、これは今あなたのお話しになった、解剖の結果を裏書きしたにすぎません。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
これをしお胡椒こしょうし、家鴨の肉の截片を入れてちょっと煮込んで食べるのだが、鼈四郎は味見をしてみるのに血生臭ちなまぐさいことはなかった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
胡椒こしょうでもいだように鼻がつーんとする、ところを銀之丞がつけて入って得意の足がらみ、ひじでもってあごをぐわんと突き上げた
恋の伝七郎 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
本妻の悋気りんき饂飩うどん胡椒こしょうはおさだまり、なんとも存ぜぬ。紫色はおろか、身中みうちが、かば茶色になるとても、君ゆえならば厭わぬ。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これは狸肉を細かくいてだんごに丸め、胡椒こしょうと調味料を入れて軽く焼いたのであるそうだ。なかなかいける。臭みがない。
たぬき汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
Kはほとんど呆然ぼうぜんとして女の顔を見上げていたが、女がこうまで身近に来ると、胡椒こしょうのような、苦い、刺激的なかおりが女から発散するのだった。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
「わたしの心はこの胡椒こしょう……みくだいて粉にしてかおりを見て下さるなら……」というようなキザな文句が若い女に喜ばれて暗誦あんしょうされたもんだ。
しかるに回教を奉ずるアラビア人は、無毒の蛇を捕え頭を去り体を小片に切り串に貫き、火の上にまわしながらレモンや塩や胡椒こしょう等を振り掛け食う。
みつ、酒、胡椒こしょう、味の素、ソースのたぐいを巧みに注ぎかけねばならぬところの、ちょっと複雑な操作を必要とするものは、私は美佐子に調理を頼んだ。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
今差上げた料理の中に甘いと鹹いのは勿論、胡椒こしょう芥子からしの辛いのがあり、梅干や蜜柑の酸いのがあり、百合や蜜柑の皮の苦いのがあって五味になる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「ニューギニヤの胡椒こしょうもあるよ。それからこの次帰ってくるときには、マニラの葉巻はまきと布とを持ってくるとさ」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は、この人の小さな足を、その茶色絹の靴下と一緒に、塩と胡椒こしょうだけで食べてしまいたい。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
テントコ 鳥取県の中津山村では、胡椒こしょうをテントコといっている。この地でコショウというのは蕃椒ばんしょうすなわちトウガラシのことである。蕃椒をコショウと呼ぶ地域は存外に弘い。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
無遠慮ないやしい快楽、醜悪や貪欲どんよくや肉体的欠陥などの喜び、半裸体の人々、兵卒小屋の冗談、羹物あつものや赤胡椒こしょうや油の乗った肉や特別室——ふざけきった四幕のあとで、事件の錯綜さくそうによって
「学位売買事件」というあまり目出度めでたからぬ名前の事件が新聞社会欄のにぎやかで無味な空虚の中に振りかれた胡椒こしょうのごとく世間の耳目を刺戟した。正確な事実は審判の日を待たなければ判明しない。
学位について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
胡椒こしょうと塩というあの階級、それに属していたのである。
茶類および胡椒こしょう合計
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
これは狸肉を細かく挽いてだんごに丸め、胡椒こしょうと調味料を入れて軽く焼いたのであるさうだ。なか/\いける。臭みがない。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
本式にすれば水一杯と牛乳一杯とクリーム一杯とを鍋の中で沸かして塩と胡椒こしょうとバターとを入れて米利堅粉めりけんこを水で溶いてそれへ入れてかけ汁をこしらえる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
窒息性のホスゲンは堆肥くさく、催涙性のクロル・ピクリンはツーンと胡椒こしょうくさく、糜爛性のイペリットは芥子からしくさいから、瓦斯のあるなしはすぐわかるのだ。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
砂馬はネギの箱を取って、箱ごと傾けてザクを、まるで胡椒こしょうでもかけるみたいに、鍋の上にぶっかけて
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「駄目駄目、何の変わった所見もない、ただ右の拇指おやゆび胡椒こしょうの粉が少し着いていたくらいのものだ」
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
わざと肩肘かたひじを張るのではないかと思えるほどの横柄な所作は、また荒っぽく無雑作に見えた。教師は左の手で一つのさじを、鉢の蔬菜の上へ控えた。塩と胡椒こしょう辛子からしを入れる。酢を入れる。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこから蘇木そぼく胡椒こしょうの類をあがない取って、これを中朝ちゅうちょうに貢献したという代償物は、いわゆる海肥かいひすなわち宝貝以外にはあったとも思われぬから、それを運んだのもまたこの島の船であったろう。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこには貨幣だの胡椒こしょうだの大蒜にんにくだのがはいっていた。
塩と胡椒こしょうで味をつけてモー一度火にかけて実を入れて出すのが通常のスープです。しかるに家庭料理のスープは色々の製法がありますがいずれも大概二日かかります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いわゆる仲次なかつぎ貿易の始めにおいては、蘇木・胡椒こしょう等の南方の産物のみが、表文の上には出ているが、是を調達するにも多くの宝貝を船に積んで、まず西南の諸国と交易してこなければならなかった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それが三十分ばかり煮えた処で玉葱たまねぎか普通の葱を加えますがそれはその時の見計みはからいでいいのです。そうして塩と胡椒こしょうとバターで味をつけて三十分ばかり煮て翌日あくるひまで置きます。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
先ず湯煮玉子ゆでたまごの黄身二つを裏漉うらごしにして生玉子の黄身一つを入れて丁寧ていねいに混ぜ合せてそれから芥子からしを小匙に一杯と塩を小匙に軽く一杯と胡椒こしょう少しと砂糖を小匙に半杯入れて最初にサラダ油を
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)