股立ももだ)” の例文
その武士たちははかま股立ももだちを高く取り、抜き身の槍を立て、畳をガンギに食い違えに積み、往来を厳重に警衛しているのである。
かれらは袴の股立ももだちを取って、この泥ぶかい岸に降り立って、疑問の帯をずるずると手繰たぐりあげたが、帯は別に不思議の働きをも見せないで
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
よし、とばかり刀のをとってたすきにかけ、はかま股立ももだちを取りながら先方の浪人を見ると、その身構えがまるで素人しろうとだ。掛け声勇ましくこちらは飛び込んで行った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
きっと、吉宗が振返ってみますと、革襷かわだすき股立ももだちのまま、旗本の中坊ちゅうぼう陽之助がそこに小膝を折って
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋山先生ははかま股立ももだちをとって飛出した。生徒もみんな加勢に飛出した。表通りからも、裏通りからも、番頭さんや小僧や、権助ごんすけさんまでが火事と間違えて駈けつけてきた。
馬繋ぎ場のわきで立ちどまった彼は、振り分け荷を土塀の下の草の上において、袴の股立ももだちをおろした。手拭てふきを出して、すそを、特に脚絆きゃはんの黄色いほこりをはらいおとすのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
深いみどりの上へ薄いセピヤを流した空のなかに、はっきりせぬとびが一羽舞っている。かりはまだ渡って来ぬ。むこうからはかま股立ももだちを取った小供が唱歌をうたいながら愉快そうにあるいて来た。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すぐ間近かにひびく陣太鼓の音で眼がさめたのだ。一学は慌ててはね起きた。袴をはき股立ももだちをかかげるが早いか、彼はその晩、上野介と左兵衛の眠っている筈の奥の部屋へ駈けつけた。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
と、股立ももだちを取って、刀を掴んだまま、庭上に飛び下りようとしたとき
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
この方から逆寄さかよせして、別宅のその産屋うぶやへ、守刀まもりがたな真先まっさきに露払いで乗込めさ、と古袴ふるばかま股立ももだちを取って、突立上つッたちあがりますのにいきおいづいて、お産婦をしとねのまま、四隅と両方、六人の手でそっいて、釣台へ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あわてて、袴の股立ももだちをおろそうとした。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼は深い編笠あみがさをかぶって、白柄しろつかの大小を横たえて、この頃流行はや伊達羽織だてばおりを腰に巻いて、はかま股立ももだちを高く取っていた。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
半蔵は父と同じように、麻の𧘕𧘔かみしもをつけ、はかま股立ももだちを取って、親子してその間を奔走した。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すぐはかま股立ももだち取って、室内から二本の稽古槍を抱えて庭へ降りて来た。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とても一と通りのことでは歩かれないと覚悟して、伊四郎は足袋をぬいで、袴の股立ももだちを高く取って、素足になった。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
靴は勿論すくない、みな草履であったが、強い雨や雪の日には、尻を端折はしょり、あるいは袴の股立ももだちを取って、はだしで通学する者も随分あった。学校でもそれをとがめなかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二人ともに合羽をきて、袴の股立ももだちを取って、草鞋をはいていた。
妖婆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)