羽振はぶ)” の例文
うまくやったのは猿面さるめん秀吉ひでよし、山崎の一戦から柴田しばた佐々さっさ滝川たきがわも眼中になく、メキメキ羽振はぶりをあげたが、ずるいやつは徳川家康とくがわいえやすだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「森本ちぬ子さんはどうでしょうか。あの人は、とても羽振はぶりのいい芸術家のところへおよめにいらっしったッて云う事ですわ」
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
鈴岡さんは、それぁ、いまこそ少しは羽振はぶりがいいようだけど、元をただせば、お前たちのお父さんの家来じゃないか。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
立女形たておやまではないけれど、顔と身体の圧倒的な美しさが、特殊の人気を呼んで、一座の女優中でも、二番目ぐらいには羽振はぶりのよい名前になっていた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
……以前のあのうち羽振はぶ鶏鳴けいめいの勢いは皆無だ。剣刀つるぎたち身にうる丈夫ますらお面影おもかげは全くなくなってしまった。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
武村兵曹たけむらへいそう彼等かれら仲間なかまでも羽振はぶりよきをとこなに一言ひとこと二言ふたこといふと、いさましき水兵すいへい一團いちだんは、ひとしくぼうたかとばして、萬歳ばんざいさけんだ、彼等かれらその敬愛けいあいする櫻木大佐さくらぎたいさ知己ちきたる吾等われら
もし彼に、けちな虫さえつかなければ、やがては、羽振はぶりをかす人間になるだろうと。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
もう梢を離れるらしい塒鳥ねぐらどりが、近い端山はやま木群こむらで、羽振はぶきの音を立て初めている。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
島田髷しまだまげの時代には売物にならなかった御面相ごめんそうが、口紅くちべに爪紅つまべに、ハイヒールで堂々と寿司通仲間に侵入し、羽振はぶりを利かす時代になってしまった。昔ならほとんど見られなかった風景である。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
西丸にしまるひかやくつかさ、今で言えば文書課長に当る身が、羽振はぶりがいいといったところで、要するにちまたの一剣術使い、神保造酒風情ふぜいに、背に腹は換えられない、ペコペコでもないが、この通り
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この船をすでに追ひぬきうち羽振はぶく鷹いさぎよし西北にしきたの晴
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いや、お吉、お前方の親切はほんとうに嬉しいぞ。それが本当だ、今まで拙者が交際していたやつらは、羽振はぶりのよい時だけに限ったものだが、お前たちにはそれがないのが嬉しい、嬉しい。お吉、ほんの志じゃ、これを
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが、今は家光将軍の寵童ちょうどうであり、小姓組では羽振はぶりがよいし、服装は綺羅きらで、容姿は端麗たんれいな彼だった。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)