罪科つみとが)” の例文
「これは助命の願いではございません。どんな罪科つみとががありましょうとも、小三郎は私の許婚、二世をちぎった方に違いはございません」
「碁打と云つて寺方や、物持百姓の家へ押し入り、盗んだ金の罪科つみとがは、毛抜けの塔の二重三重、重なる悪事に高飛なし——と云ふんだらう。」
或る日の小せん (新字旧仮名) / 吉井勇(著)
雪之丞は、そう言われると、まるで、手を下さずに、このひとを殺して行くような気がして、何とも言えぬ罪科つみとがを感じないではいられぬのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
可愛いや可愛いや、何ンの罪科つみとがもないお前までこんな姿になってしもうた。何ンでわたしも殺さんのでッしょう。そうしたら、いっそ楽しかるべきを
次第によっては、かれも切腹の罪科つみとがは免かれない。相手を斬ってうまく逃げおおせればいいが、それが町方の眼にとまったりすると、甚だ面倒になる。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
先刻よりお菊は無念こらへしが思はずワツと泣出しお前はな/\強欲がうよく非道ひだうの大惡人今眼前がんぜん母樣の御命に迄かゝは難儀なんぎそれを見返らぬのみならず罪科つみとがもなき母樣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
罪科つみとがもねえ人間を、寝床から縄にかけて、調べもせず、叩っ込んでおくのが、下々しもじものためのご改革けいっ。こんな悪政が、ご一新なら、俺たちは、真ッ平ご免だ
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へえい。どう人違いしやがったか、何の罪科つみとがもねえのに、御番所の木ッ葉役人共めが、この通りあっしを
昔の罪科つみとが、見分けてぎ出す。見る眼、嗅ぐ鼻、閻魔の帳面。人の心を裏から裏まで。透かし見通す清浄玻璃せいじょうはりの。鏡なんぞは影さえ見えない。罪があろうが、又、無かろうが。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それよりか、身に覚えなき罪科つみとがも何の明しの立てようなく哀れ刑場の露と消え……なんテいう方が、何となく東洋的なる固有の残忍非道な思いをさせてかえって痛快ではないか。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「どう、白状したら……、でも、いい醜態ざまじゃないの。自分がさんざん、罪科つみとがもない人たちを、見下みくだしていたんだからね。その台の下へ、いまに御自分が立つんでしょうからねえ」
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それ、その三条の橋の下に、関白殿のお首が懸けられておりましたが、そこへ御一族のお子様がたや上﨟じょうろう様がたをお引き出しなされて、何の罪科つみとがもない者を一人々々お斬りなされたのじゃ。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なんの罪科つみとがもない人間を騒がせやあがるだ。
「これは助命の願ひではございません。どんな罪科つみとががありませうとも、小三郎は私の許婚、二世をちぎつた方に違ひはございません」
昔の罪科つみとがを並べられた三斎、恐怖のにえとなって、ために、心臓に強烈な衝撃をうけて、もはや、生き直る力もない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いとなみ居たりしがさては貴樣が殺したるかと然も驚きたる樣子をなせば三次は最早やつきとなりとぼけなさんな長庵老屋敷へ出すとお安をあざむき妹娘を苦界くがいしづうかなき罪科つみとが
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先生のつい犯した過失同様な女殺しのとがとは違って、この武松のやった罪科つみとがは、血の池、針の山を追われる地獄のようなもんです。あなたに巻き添えを食わせては申しわけない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これがなんぞの罪科つみとがになりますことなら、だれかれと申しませぬ、この多根めがすべての罪を負い、どのようなおしおきでもいただきますゆえ、よしなにお取り計らいくださりませ……
世間の評判をあてにして罪科つみとがもねえ者を無暗にどうするのうするのと、そんな無慈悲なことはしたくねえ。その代りに何もかも正直に云ってくれなけりゃあ困る。いいかい、判ったかね。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
海山にもかへがたき御恩をあだにいたしそうろう罪科つみとが、来世のほどもおそろしく存じまゐらせ候……とあってお園の方の手紙にはただ二世にせ三世さんぜまでも契りし御方おかたのお身上みのうえに思いがけない不幸の起りしため
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
相手が女性にょしょう、しかも、父にこそ恨みはあれ、何の罪科つみとがもない人と思うと、自分のもくろみがあまりに悪辣あくらつな気がして、やや、心が屈しかけた雪之丞、ふと
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
おしになれ。ものいうことは、罪科つみとがになるぞ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)