縄梯子なわばしご)” の例文
旧字:繩梯子
彼は縄梯子なわばしごに取りすがって、舷檣の頂きに登ろうとつとめた。それはあたかも去りゆくものの最後の一瞥いちべつを得んと望むかのように——。
ここの部屋は「係員以外の出入厳禁」であったから、係員である僕たちは部屋に戻ると縄梯子なわばしごきあげておかなければならなかった。
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
ボートは、青い青い水を切って、傷ついた戦艦『メーン』のふなばたについた。舷梯げんていがなくなって、縄梯子なわばしごがぶらりと下っている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
と思っていると、天井からスルスルと縄梯子なわばしごが下り、それを伝って、一人の小女こおんなが降りて来たが、召使めしつかいであろう。彼に一礼してその場を立去った。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と、同時に、ヘリコプターからバラリとおりてきたのは一条の縄梯子なわばしご。四馬剣尺はヨタヨタとその縄梯子に手をかけた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中は、真暗なのだが、慣れたわが庵のこと、爪先さぐりで、危なっかしい縄梯子なわばしごを下りてゆくと、平らな板じきになる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
上では、城内の武士が声をからして、八ぽうへ手配てくばりをさけびつつ、縄梯子なわばしごを、石垣のそとへかけおろしてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吃りの漁夫と学生が、機関室の縄梯子なわばしごのようなタラップを下りて行った。急いでいたし、慣れていないので、何度も足をすべらして、危く、手で吊下つりさがった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
ただときどきだれか曲芸師仲間が縄梯子なわばしごをよじ登ってくるだけで、そうすると二人でブランコに坐り、支え綱の右と左とによりかかりながらしゃべるのだった。
最初の苦悩 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
窓を上手に切って、身体の自由になるようにして、細引で縄梯子なわばしごがかけてあったのを上手に脱け出したから、旅に疲れた与力同心の面々も更に気がつきませんでした。
帆船から投げてくれたつなをうけとって、伝馬船は帆船の舷側げんそくにつながれ、上からさげられた縄梯子なわばしごをつたって、私たちは、さるのようにすばやく、帆船の甲板におどりこんだ。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
巡査の案内に従って、松明たいまつを片手に奥深く進み入ると、この頃は昇降の便利を計る為に、横木よこぎわたした縄梯子なわばしごおろしてあるので、幾十尺の穴をくだるに格別の困難を感じなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まず縄梯子なわばしごを右のふなばたにかけたので、幼年組は先をあらそうて梯子をおり、ひさしぶりで、陸地をふむうれしさに、貝を拾ったり、海草かいそうを集めたりして、のどかなうたとともに
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
上山を発してからは人烟じんえんまれなる山谷さんこくの間を過ぎた。縄梯子なわばしごすがって断崖だんがい上下しょうかしたこともある。よるの宿は旅人りょじんもちを売って茶を供する休息所のたぐいが多かった。宿で物を盗まれることも数度に及んだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
誰も気付かぬうちに、機体からスルスルと、縄梯子なわばしごが下ろされ、やがて飛行服に身を固めた人が、機上から姿を現わすと、一段一段と、梯子を下りて行った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帆はすっかりおろしてありましたが、帆桁ほげたのいくつもついたマストが三本立っていて、その頂上からたくさんの綱が、蜘蛛くもの巣のように張ってあって、縄梯子なわばしごのようなものもかかっています。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三日に一度、周馬は、鏡下へ縄梯子なわばしごを下ろして、密見の間をおとずれる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いよいよ南条はその塀際へいぎわまでさがった時に、手早く塀の一端へ手をかけました。その手をかけたことによって気がつけば、見上げるような高い塀の上から、一条の縄梯子なわばしごが架け下ろしてあります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
師父ターネフは、水夫長のような身軽さをもって、マストの縄梯子なわばしごをよじのぼっていった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、木の根に結んだ縄梯子なわばしごを岩肌で一つ振ってみせる。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ヘリコプターが照らす探照灯たんしょうとうの光のために塔のなかは、昼よりもまだ明るいのである。一同はいま、ヘリコプターから縄梯子なわばしごづたいにおりてきたのであろう。脚が少しフラついていた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そこだ。しっかり漕げ。貝谷、銃を構えていろ。——そこでこのボートを幽霊船の船尾にぶらさがっている縄梯子なわばしごの下へつける。おれがのぼったら、お前たちもあとからついてのぼれ」
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
牛丸少年をかつぎあげた怪漢かいかんの一同は、それから間もなく白い河原の中へ下りていった。そこには、おあつらえ向きにヘリコプターが上に待っていて、つなだか縄梯子なわばしごだかを下ろしてあった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき臨検隊長岸少尉は、舷側におろされた縄梯子なわばしごを今手をかけて下りようとしたところだったが、虎船長があらわれたと知って、つかつかと後へ戻り、無言のまましっかとその手をにぎった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)