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綽々
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しゃくしゃく
ふりがな文庫
“
綽々
(
しゃくしゃく
)” の例文
進むべくして進み、辞すべくして辞する、その事に処するに、
綽々
(
しゃくしゃく
)
として余裕があった。抽斎の
咸
(
かん
)
の
九四
(
きゅうし
)
を説いたのは虚言ではない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「オイ、候補生。来襲した敵機というのはどこの飛行機だか、わかるかネ」K隊長は、
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる余裕を示して候補生をからかった。
空襲下の日本
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかもイエスの知恵と勇気とは、すべての敵の悪意に満ちた論難を破ってなお余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
たるものであった。イエス様の大勝利です。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
食物に対した時は外の事を考えないで食物の味を
賞翫
(
しょうがん
)
する事の出来る人がその心に
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる余裕もあるので真の英雄豪傑と言うべきだ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
と独語したという言葉の意味の中には、彼がそのときすでに、全戦局に対して
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる余裕を持ち得たことを示したものといっていい。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
余裕
(
よゆう
)
綽々
(
しゃくしゃく
)
とした寺田の買い方にふと
小憎
(
こにく
)
らしくなった顔を見上げるのだったが、そんな時寺田の眼は
苛々
(
いらいら
)
と燃えて急に
挑
(
いど
)
み
掛
(
かか
)
るようだった。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
八月十六日以来、謙信は只々山上を
逍遙
(
しょうよう
)
して古詩を咏じ琵琶を弾じ自ら小鼓をうって近習に謡わせるなど余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
であった。
川中島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
言わば余裕
頗
(
すこぶ
)
る
綽々
(
しゃくしゃく
)
としたそういう幸福な遭難者には、浅草で死んだ人たちの
最期
(
さいご
)
は話して聞かされても、はっきり
会得
(
えとく
)
することができない位である。
草紅葉
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
第一義はまさに、それ自体としては無価値ながら、それを組み合わせて、美的形象が余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる優越をもって作り出される素材にあるはずですからね。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
疲労の色も見せずに、
綽々
(
しゃくしゃく
)
として京弥が五人目を促そうとしたとき、にたりと残忍そうに嘲笑って、矢庭にすっくと立ち現れたのは二の弟子の吉田兵助です。
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
少年天才メニューインも老巧メルケルも悪くないが、この曲を征服し切った、フーベルマンの
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる態度には、なんとなく余人に見られぬ安らかさがある。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
しかし悠々
綽々
(
しゃくしゃく
)
として、一向にムクレた様子がないのは、そこが凡人と偉人の差かも知れない。あんまり見上げた差ではない。要するに、海舟先生、苦吟の巻であった。
明治開化 安吾捕物:17 その十六 家族は六人・目一ツ半
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
いまイギリス人は、わずかを働いて多くをとっている——その、余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
ぶりはなにに由来する⁈ インド、
濠州
(
オーストラリア
)
、南
阿
(
アフリカ
)
、カナダ——みな一、二世紀まえの探検の成果だ。
人外魔境:10 地軸二万哩
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そしてまたこの
家
(
や
)
の主人に対して
先輩
(
せんぱい
)
たる情愛と
貫禄
(
かんろく
)
とをもって臨んでいる
綽々
(
しゃくしゃく
)
として
余裕
(
よゆう
)
ある態度は、いかにもここの細君をしてその来訪を
需
(
もと
)
めさせただけのことは有る。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼らはいやに余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
としている。そしてすべてを見抜いているらしい。信徒の集会所は茂木であると彼らはいっているが果たしてほんとうにそう思っているのであろうか。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
そこにすでに男の虚勢を見透し、見透すがゆえに、余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
とした自分であることを男に示したかった。その余裕から一層男を
焦
(
じ
)
らせて、牽付け度い女の持前の罪な罠もあろう。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
どんな難事件に出会っても、どんな強敵を相手にしても、
綽々
(
しゃくしゃく
)
として余裕を保っていた私の精神は……
身体
(
からだ
)
はギリギリと引き締まって、ちょっと
触
(
さわ
)
っても跳ね上る位になっていた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鼠のずぼんの
裾
(
すそ
)
が見え、
樺色
(
かばいろ
)
の靴を
穿
(
は
)
き、
同一
(
おなじ
)
色の皮手袋、
洋杖
(
ステッキ
)
を軽くつき、
両個
(
ふたつ
)
の狼を前にしつつ、自若たるその
風采
(
ふうさい
)
、あたかも曲馬師の猛獣に対するごとく
綽々
(
しゃくしゃく
)
として余裕あり。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
学校の記録を破るスピィディな余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
の走り方で先頭に立ち、帰ってきた。
さようなら
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
満蔵はもうひとりで唄を歌ってる。おとよさんは百姓の仕事は何でも上手で強い。にこにこしながら手も汚さず汗も出さず、
綽々
(
しゃくしゃく
)
として刈ってるが、四
把
(
わ
)
と五把との割合をもってより多く刈る。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
身だしなみが、チャンとできていると、何時来客があっても、お客を待たせておいて、急いで
衣物
(
きもの
)
を着かえたり、髪や顔の手入れをなさらずとも、余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
として、応接することができるのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
まだ余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる深さだということになるのであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と夫人は
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる余裕を示して
或良人の惨敗
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
綽々
(
しゃくしゃく
)
と余裕のあるじぶんの立場を道誉は言外にほのめかしたことらしい。高氏は彼の笑っている
黒子
(
ほくろ
)
に気づいた。見くだしているのである。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
と、ある完全なものに鍛え上げられはしなかった。彼の心は生きている……
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
なかでも
忍剣
(
にんけん
)
は、疲れたさまもなく、なお、
綽々
(
しゃくしゃく
)
たる
余裕
(
よゆう
)
を
禅杖
(
ぜんじょう
)
に見せながら
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それのみならず、余裕
綽々
(
しゃくしゃく
)
な八荒坊は、息のあい
間
(
ま
)
に、こうもいった。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「まず、ごゆるり……」と、余裕の
綽々
(
しゃくしゃく
)
さをみせたものである。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
激越に突っかかって来るのを、又八は、
綽々
(
しゃくしゃく
)
として
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
綽
漢検1級
部首:⽷
14画
々
3画
“綽々”で始まる語句
綽々然