糺問きゅうもん)” の例文
「この畜類めらが首、滅多には斬るな。手足を、かせませ、糺問きゅうもんに糺問した上で、河原にひき出して、かしらねい」と、ののしった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其のことは直ぐに檀家に知れて大問題となり、住職は女に裏切られた苦しさと、厳しい檀家の糺問きゅうもんに耐えかねて縊死いしした。
法華僧の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これは少佐が生徒を糺問きゅうもんする時におりおり見せる表情で、少佐自身では、それで自分の顔付が非常に和らいで見えると思っているらしいのである。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いらだちきった組頭は、この上は、自身糺問きゅうもんに当らねばらちが明かんと覚悟した時分、黒灰浦の海岸の陣屋の方に当って、一旒いちりゅうの旗の揚るのを認めました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老僕を引きすえて糺問きゅうもんしてみたが、寝ぼけているのか顛倒てんとうしたのかいうことがさらに判然しない。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
長崎の奉行たちがシロオテを糺問きゅうもんして失敗したのは宝永五年の冬のことであるが、そのうちに年も暮れて、あくる宝永六年の正月に将軍が死に、あたらしい将軍が代ってなった。
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかもその糺問きゅうもんの声は調子づいてだんだん高められて、果ては何処どこからともなくそわそわと物音のする夕暮れの町の空気が、この癇高かんだかな叫び声で埋められてしまうほどになった。
卑怯者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ことにスペインにおける宗教裁判はその糺問きゅうもん峻烈しゅんれつで処刑が残酷なので有名であった。
落穴と振子 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
西班牙スペインセヴィリアの宗教裁判所に、糺問きゅうもん官補のフォスコロという若いキャノンがいたのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
なおまた恕軒の作った伝には、枕山は東京詞三十首を賦して時事を諷したため弾正台の糺問きゅうもんを受けたといわれている。わたくしはこれらの事件を詳にする資料のないことを悲しんでいる。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それのみならず私の夢にも知らない事までお前がやったろうといっていろいろ糺問きゅうもんされますけれども、どうも全く知らない事は幾ら言ってみろと言われたところで何にもしてみようがない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
こやつをきびしく糺問きゅうもんしてみよ
「されば、仰せつけのまま、あとに残って、糺問きゅうもんいたしましたところ、ついに観念したか、曲者もやっと泥を吐きおりました」
結局、その十余人の川中島の百姓たちが、くだん周章者あわてものを引ッ捕えて、百姓呼ばわりを充分に糺問きゅうもんしました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
目下は松山藩松平隠岐守おきのかみの屋敷に預けられて評定所の糺問きゅうもんを受けているのだった。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
させる糺問きゅうもんもなくて、此時師は古賀氏(謹一郎号茶渓)の家人の名目にてありければ主人に預けらるゝとて家に帰り居たり。斯くて別に問はるゝ事もなくて其年は暮れにけり。(以下略之)
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おおいつでも。……なお御不審があれば、楽翁に縄打って、いかにお白洲で糺問きゅうもんあるとも、また、拷問ごうもんもいとい申さぬと、……お伝え下されい」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或時新来の駐在所巡査がこの男をつかまえて薪の出所を糺問きゅうもんしきびしく叱りつけて居るのを見て村人が
「こいつ、自分の勝手なことには、饒舌じょうぜつほしいままにし、奉行の糺問きゅうもんにはおしを装っておる。容易なことでは、泥を吐くまい、拷問ごうもんにかけろ、拷問にかけい!」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵馬が、紙屑買いを糺問きゅうもんしていることの瞬間、後ろの女のことは暫く忘れておりました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それさえ、素直に白状いたすなら、ここはすぐ解いて帰してやる。さもなくば、夫婦とも、六波羅ノ庁まで差し立てて、白洲の糺問きゅうもんを受けねばならんぞ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで後日糺問きゅうもんされると困るから、一応おれに見て講義をして置いてくれというわけだな
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
関勝かんしょうは、かえって、なにかじてしまった。つまらない糺問きゅうもんをしたとは思いながら怏々おうおうと、こころも愉しまず、幕舎を出て、独り寒月を仰いでいた。すると——
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
検視の役人は米友の訊問を打捨てて、弁信の糺問きゅうもんにとりかかろうとします。お蝶は傍でハラハラするけれども、盲目の悲しさに、弁信は一向、役人の権幕けんまくを見て取ることができずに
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
刀試しか、きびしい糺問きゅうもんをうけるかと思いのほか、弦之丞と万吉の居所へ案内してくれれば、いるだけ金はやろうという、鴻山の言葉に、お綱は思わず手をついて
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところで縛りは縛ってみたが、連れて来て糺問きゅうもんしてみると、なんらの罪がない——
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
不敵な竹童ちくどうつらがまえを、じッとみつめていた呂宋兵衛るそんべえは、ことばの糺問きゅうもん無益むえきと知って、口をつぐみ、黙然もくねんと右手の人さし指をむけ、天井てんじょうから竹童の頭の上へ線をかいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「宋江は早やここにはいない。邸内くまなくあらためたが何処にも見えん。あとは屋根裏と床下だけだ。念のためそこを捜せ。その間におれたちはもういちど宋老人を糺問きゅうもんしてみる」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御簾ぎょれんの前にすえて、諸卿列席で糺問きゅうもんをした上、その答えによって、審議を下してはどうかというので、この間うちから、青蓮院へ向って、たびたび、お召しの使いが立っている。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外様とざま譜代ふだいを問わず、諸侯の内秘や藩政の非点をつかんで、これを糺問きゅうもんに附し、移封、減地、或いは断絶などの——荒療治をやらねばならない当面の悪役が大目付じゃ。お父上でなければできぬ。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糺問きゅうもん、相すみました』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)