りゅう)” の例文
これけだし、すでに腹の畑はこやしができ、掘り起こされて土壤どじょうが柔かになり、下種かしゅの時おそしと待っているところに、空飛ぶ鳥が偶然ぐうぜんりゅうおとしたり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
草花の種でも千万りゅうのうち一つ位が生育するものに候。然しとにかく妙な気分になり候。小生はこれを称して人工的インスピレーションとなづけ候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
綾羅錦繍りょうらきんしゅう触るるもの皆色を変ず。粒化りゅうかして魚目に擬し、陶壺中とうこちゅう鉛封えんぷうす。酒中しゅちゅう神効しんこうあり。一りゅうの用、めい半日はんにちを出でず。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一秒に砂一りゅう、幾億万年ののちには、この大陸をひたし尽そうとする処の水で、いまも、瞬間ののちも、咄嗟とっさのさきも、まさしかなすべく働いて居るのであるが
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いずれも一寸のたま三十三りゅう、八分の珠百五粒、紅宝玉三十おおきさ鶴の卵、粒を揃えて、これは碧瑪瑙あおめのうの盆にかざり、緑宝玉、三百顆、孔雀くじゃくの尾の渦巻の数に合せ、紫の瑠璃るりの台
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自己の心のえどころこそ成敗をはか尺度しゃくどであって、この尺度ががらぬ以上は、いかなる失敗に遭遇そうぐうしても心にうれうることがない、これ霊丹れいたんりゅう、鉄をてんじてきんと成すものか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
コンナに色々と千差万別している動物たちの中でも、進化の度合いの極めて低い、海月くらげ以下の動物連中は、御覧の通り脳髄とか、神経りゅうとかいうハイカラなものを持っていないだろう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
三昼夜麻畑の中に蟄伏ちっぷくして、一たびその身に会せんため、一りゅういいをだに口にせで、かえりて湿虫のえばとなれる、意中の人の窮苦には、泰山といえども動かでむべき、お通は転倒てんどうしたるなり。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)