たた)” の例文
之を追いて山深く入ると弥陀三尊が胸に矢を負いてたたせ給うを見て、随喜渇仰して法躰ほったいとなり、慈興じこうと号して立山を開いたという。
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
今の御姿おすがたはもう一里先か、エヽせめては一日路いちにちじ程も見透みとおしたきを役たたぬ此眼の腹だたしやと門辺かどべに伸びあがりての甲斐かいなき繰言くりごとそれももっともなりき。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
イヨー、中々よく抜目ぬけめはないな。貴様にやつたつてやくにはたたないが、どうも仕方がない、誕生日のお祝ひにやるとしやうよ。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
執着の強い笠井もたたなければならなくなった。その場を取りつくろう世辞をいって怒ったふうも見せずに坂を下りて行った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
怪しき声してなき狂ひ、かどを守ることだにせざれば、物の用にもたたぬなれど、主人は事の由来おこりを知れば、不憫さいとど増さりつつ、心を籠めて介抱なせど。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
或は人をねたみにくみて我身ひとりたたんと思へど、人ににくまうとまれて皆我身の仇と成ことをしらず、いとはかなく浅猿あさまし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この夜の清風明月、予の感情を強く動かして、ついに文学を以て世にたたんという考えを固くさせたり。
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
畚が中途までさがって来た時、暗い岩穴の奥から一個ひとりの怪しい者が現われた。彼は刃物を振翳ふりかざして、綱を切って落そうと試みたが、綱は案外に強いので、容易に刃がたたなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ひツぱたくばかりでなく、時には板戸のはまつた押入や物置に入れたり、「直立」と云つて、先生の部屋へつれて行つて、気をつけエをさしたまま、一時間も二時間も同じ場所へたたせて置くのでした。
先生と生徒 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
すがらきみたたすらめ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
アラ、それでも私が海へび込んで見たつて、何のやくにもたたないのネ。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)