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眼深
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まぶか
ふりがな文庫
“
眼深
(
まぶか
)” の例文
その男は和服に春の外套を着て、大型の鳥打帽を
眼深
(
まぶか
)
に冠っていた。やみの中でも、大きな眼鏡が、遠くの光を反射してキラキラ光った。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
靴とその傍に落ちていた棍棒を拾い上げて靴の
紐
(
ひも
)
でくくり、なおそれをしっかりと
手拭
(
てぬぐい
)
でもって
身体
(
からだ
)
に結わえつけ、とくに鳥打帽を
眼深
(
まぶか
)
に冠り
五階の窓:06 合作の六(終局)
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
鼠色のハンチングを
眼深
(
まぶか
)
に冠った蒼白く長い顔の男が、薄茶の夏外套に包んだ
身体
(
からだ
)
を、彼女の右肩に擦り寄せるようにして立っているだけだった。
指
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
中折帽を
眼深
(
まぶか
)
にかむって、
鼠色
(
ねずみいろ
)
のスプリング・コートのポケットへ、何故か右手を絶えず突込んだままでいる。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
大男は頭巾を
眼深
(
まぶか
)
にかぶり、黒い毛織の襟巻きを鼻の頭が隠れる迄ぐる/\と頤に捲きつけて俯向きながら、その恐ろしく大きな痩せた両手を火にかざしてゐたが
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
▼ もっと見る
もう一つはその家の打ち出した
廂
(
ひさし
)
なのだが、その廂が
眼深
(
まぶか
)
に冠った帽子の廂のように——これは形容というよりも、「おや、あそこの店は帽子の廂をやけに下げているぞ」
檸檬
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
と
言
(
い
)
つて、
赤
(
あか
)
くなつた
私
(
わたし
)
の
手
(
て
)
を
熱
(
あつ
)
い
唇
(
くちびる
)
でひつたりと
吸
(
す
)
ひました。
布団
(
ふとん
)
を
眼深
(
まぶか
)
かにかぶつた
小鳩
(
こばと
)
のやうに
臆病
(
をくびやう
)
な
少年
(
せうねん
)
はおど/\しながらも、
女
(
おんな
)
のするがまヽにまかせてゐた。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
肉づきのいい
項
(
うなじ
)
には
虹
(
にじ
)
のようにギラギラ光る水晶の
頸飾
(
くびかざ
)
りをして、
眼深
(
まぶか
)
に被った黒
天鵞絨
(
びろうど
)
の帽子の下には、一種神秘な感じがするほど恐ろしく白い鼻の
尖端
(
せんたん
)
と
頤
(
あご
)
の先が見え
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
例の使者はゆっくりした早足で馬に乗って引返し、かなり幾度も路傍の居酒屋に止って酒を飲んだが、しかし、なるべく口を噤み、帽子を
眼深
(
まぶか
)
にかぶっているようにしていた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
白い
路
(
みち
)
の行手に、帽子を
眼深
(
まぶか
)
に
被
(
かぶ
)
つてうなだれたまま、オーバコートのポケットに手を入れてしよんぼり立つてゐる、兄のヒヨロ高い姿が目についた。私が追ひつくと、兄も
列
(
なら
)
んで歩き出した。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
帽子を
眼深
(
まぶか
)
に
被
(
かぶ
)
った。パリーにはたくさんいると聞いていた盗人を気づかって、首のところまで服のボタンをかけた。幾度も立ったりすわったりした。
網棚
(
あみだな
)
と腰掛とに幾度もかばんを置き代えた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その運転手の人相は
咄嗟
(
とっさ
)
の間の事であったし、おまけに荒い縞の鳥打帽を
眼深
(
まぶか
)
に冠って、近来大流行の黒い
口覆
(
くちおお
)
いをかけていたから、よくは解らなかったが、カーキー色の運転服を着た、四十恰好の
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして帽子を
眼深
(
まぶか
)
に引き下げながら、彼は出て行った。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
明智はソフト帽を
眼深
(
まぶか
)
くして顔を隠しながら、円タクを拾った。そして、乞食と並んで車内に腰をおろした。車は乞食の言葉に従って、芝浦の方角に疾走する。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は、焦茶色の外套の襟で
頤
(
あご
)
を隠して、
鳶色
(
とびいろ
)
のソフトを
眼深
(
まぶか
)
に引き下げていた。そして、室の中を一渡り見渡してから、彼は隅のテーブルへ行って
身体
(
からだ
)
を投げ出した。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
もう一つは其の家の打ち出した
廂
(
ひさし
)
なのだが、その廂が
眼深
(
まぶか
)
に冠つた帽子の廂のやうに——これは形容といふよりも、「おや、あそこの店は帽子の廂をやけに下げてゐるぞ」
檸檬
(旧字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
大男は
頭巾
(
ずきん
)
を
眼深
(
まぶか
)
にかぶり、黒い毛織りの
襟巻
(
えりま
)
きを鼻の頭が隠れるまでぐるぐると
頤
(
あご
)
にまきつけてうつむきながら、その恐ろしく大きなやせた両手を火にかざしていたが
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
運転手が、
眼深
(
まぶか
)
にかぶっていたソフトを取って、自動車の窓のところへ、ヒョイと顔を出してみせた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
鳥打帽
(
とりうちぼう
)
を
眼深
(
まぶか
)
にかぶり、古ぼけた将校マントに身を包んだ、三十前後の下品な男だ。彼は鉄の箱を飛び出すと、
草履
(
ぞうり
)
の音をペタペタさせて、走る様に表の
薄暗
(
うすやみ
)
に消えた。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
眼
常用漢字
小5
部首:⽬
11画
深
常用漢字
小3
部首:⽔
11画
“眼”で始まる語句
眼
眼鏡
眼前
眼瞼
眼差
眼窩
眼球
眼眸
眼色
眼力