盛花もりばな)” の例文
もうちゃんと食卓がこしらえて、アザレエやロドダンドロンを美しく組み合せた盛花もりばなかごを真中にして、クウウェエルが二つ向き合せておいてある。
普請中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
春の野に、盛花もりばなの様な百花が乱れ咲いていた。空には白い雲がフワリと浮んで、雲雀ひばりがほがらかに鳴き交していた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
室の真中に、美しい食卓があって、レースの卓子テーブル掛が掛けてあり、その上には、果物皿や、菓子皿や、お酒の壜や、眼も覚めるような美しい盛花もりばななどがおいてある。
よつツのはしやはらかにむすんだなかから、大輪おほりん杜若かきつばたはなのぞくも風情ふぜいで、緋牡丹ひぼたんも、白百合しらゆりも、きつるいろきそうてうつる。……盛花もりばなかごらしい。いづれ病院びやうゐん見舞みまひしなであらう。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
真白できれいだった卓子テーブル掛は薄よごれて、半ば片づけられた食卓には、盛花もりばながしおれ、皺くちゃなナフキンが床にちらばっていた。今、最後の男女ふたりづれの客が出て行くところであった。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
いろいろな服装や色彩しきさいが、処々ところどころに配置された橙や青の盛花もりばなと入りまじり、秋の空気はすきとおって水のよう、信者たちもまたさっきとは打って変って、しいんとして式の始まるのを待っていました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
福寿草などのからめいた盛花もりばなが、枝も豊かに飾られてあった。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
見舞みまひ盛花もりばなを、貴方あなたなんだとおもひます——わざとね——青山あをやま墓地ぼちつて、方々はう/″\はか手向たむけてあります、其中そのなかから、りたけれてないのをつて、こしらへてたんですもの、……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
盛花もりばなの籠が邪魔になるのである。
普請中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)