白檜しらべ)” の例文
百貫ひゃっかん山・東谷山・牛首山・黒部別山・針ノ木谷・東沢などには、唐檜とうひ白檜しらべ或は落葉松の純林が真黒に繁っているのが見られる。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
(ニ)寒帶林かんたいりんまた白檜しらべ椴松帶とゞまつたい)。 このたい水平的すいへいてきには北海道ほつかいどう中央ちゆうおう以北いほく、つまり温帶林おんたいりん北部ほくぶで、同温線どうおんせん攝氏六度せつしろくど以下いか地方ちほうと、千島ちしま樺太からふと全部ぜんぶめてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
足のつまずくおそれがない、白檜しらべも現われて来た、痩せ細って、痛々しい、どこを見ても、しッとりした、濡れたような、温味がない、日は天にちゅうして、頭の直上に来ているが
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
信州梓山から四時間ばかりの楽な登りを続けた後、白檜しらべ唐檜とうひの茂った薄暗い林を抜けて、漸く急な斜面にかかると、間もなく頭の上がぱっと明るくなって
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
白檜しらべ唐櫓とうひ黒檜くろべ落葉松からまつなどで、稀にさわら米栂こめつがを交え、白樺や、山榛やまはんの木や、わけてはやなぎの淡々しく柔らかい、緑の葉が、裏を銀地に白く、ひらひらと谷風にそよがして
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
このたいにはしゆとして、白檜しらべ、とゞまつ、えぞまつ、あをもりとゞまつといつた常緑針葉樹林じようりよくしんようじゆりんでなりつてゐますが、本州ほんしゆうでは高山こうざんいたゞちかくにしらべやあをもりとゞまつがおほ
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
黒檜、白檜しらべ唐檜とうひなどの針葉樹が岩の斜面にしっかりと根を下ろして、薄暗い蔭をかざしている木の間伝いに、どこからともなく大嵐の吹きすさぶに似た音が響いて来る。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
川の両岸——といってもどてを築いた林道を除く外は、殆ど水と平行している——には、森林がある、もみつが白檜しらべなど、徳本峠からかけて、神河内高原を包み、槍ヶ岳の横尾谷
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
偃松はいまつの途切れた間や、短矮たんわい唐檜とうひ白檜しらべのまばらに散生している窪地や斜面に、や広い草原が展開して、兎菊うさぎぎく信濃金梅しなのきんばい丸葉岳蕗まるばだけぶき、車百合などが黄に紅に乱れ咲き
鹿の印象 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
頂上の北側には白檜しらべの若木に雑って偃松はいまつが生えていた。石楠はもう寒そうに葉を縮めている。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
頭の上は烟も抜き切れない程に枝と枝とが組み合った白檜しらべの密林である。宵に外を覗くと、月の面を掠めてドス黒い雲が頻りに東の方へ飛んで行く、心配な天気になって来た。
大井川奥山の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
倒木が多いのと白檜しらべの若木が密生しているのとで、余程注意して歩いても谷へ追いやられ勝ちである。国師から甲武信へ続く尾根への下り口を探し当てるのに一時間近くを要した。
思い出す儘に (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
一時間も下ると、谷一杯に拡った雪渓が五、六町も続いていた。大きな岳樺や白檜しらべなどが折れたり、根ぐるみ引抜かれたりして、雪に埋まっている。大雪崩の押した場所であろう。
下り着いた鞍部は入川谷の木賊沢と子酉ねとり川のヌク沢との分水点に当っている。唐檜とうひ白檜しらべの密生した梭葉草の多い小山を二つ踰えて、三つ目の山に懸った。この登りが飽きる程長い。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
此処では河が二股に岐れて中央に島が横たわり、島は細かい砂に蔽われて、二かかえもある大きなドロヤナギや川楊かわやなぎなどが鬱蒼と茂っているし、それに交ってつが白檜しらべや唐松などもありました。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
藤原山からの下りは、藪が深いのでなり歩行に悩んだ。瘤を一つえて其南の二の隆起は思ったより楽に通れた。また二つ程瘤を上下して白檜しらべの疎林に切明けの通じている高まりを踰えると池がある。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)