うとん)” の例文
衆人醉へる中に獨り醒むる者はれられず、斯かる氣質なれば時頼はおのづから儕輩ひと/″\うとんぜられ、瀧口時頼とは武骨者の異名いみやうよなど嘲り合ひて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
たちましたしみ、忽ちうとんずるのが君のならいで、み合せた歯をめったに開かず、真心を人の腹中に置くのが僕の性分であった。
「そうだ、姑息な示談などで泣寝入りしては破滅だと、わしが熱心に説けば説くほどうとんぜられたり嫌われたりした」
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
学校の帰途かえるさ驟雨にわかあめに逢えば、四辻から、紺蛇の目で左褄ひだりづまというのが出て来て、相合あいあいで手をいて帰るので、八ツ九ツ時分、梓はひどく男の友人にうとんじられた。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書肆しょし早くも月々の損失に驚き文学をうとんじて赤本あかほんを迎へんとするに至つて『活文壇』は忽ち廃刊となりき。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
富山はこの殿と親友たらんことを切望して、ひたすらそのこころんとつとめけるより、子爵も好みてまじはるべき人とも思はざれど、勢ひうとんがたくして、今は会員中善くれるもののさいたるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其所で彼は家庭に於ける思索家となツて、何時も何か思索にふけツてゐる、そして何時とは無く實際をうとんずるといふふうが出來て來て、すべての規則きそく無視むしする、何を爲すのも億劫おつくうになる、嫌になる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
古人の教えに「朋友にしばしばすればうとんぜらるる」とあり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さらぬも近隣の少年は、わが袖長ききぬを着て、き帯したるをうとんじて、宵々には組を造りて町中まちなかを横行しつつ、我がかどに集いては、軒に懸けたる提灯ちょうちんつぶてを投じて口々にののしりぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)