田舎路いなかみち)” の例文
旧字:田舍路
ある晩方ばんがたかれはさびしくおもいながら田舎路いなかみちあるいていますと、不思議ふしぎなことには、このまえじいさんにあったとおなじところで
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
それには弘法大師こうぼうだいし千五十年供養塔くようとうきざんであった。その下に熊笹くまざさの生い茂った吹井戸を控えて、一軒の茶見世が橋のたもとをさも田舎路いなかみちらしく見せていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は七つか八つの子供であったし、おまけに幼い時分から極めて臆病おくびょうな少年であったから、こんな夜更よふけにこんなさびしい田舎路いなかみちを独りで歩くのは随分心細かった。
母を恋うる記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
小さな鈴は歩くたびに、雄二のポケットのなかで、かすかな響をたてていました。遠足の列は街を通り抜け、白い田舎路いなかみちを歩いて行きました。綺麗きれいな小川や山が見えて来ました。
誕生日 (新字新仮名) / 原民喜(著)
子供こどもは、だまって、はだしのままおばあさんにれられて、田舎路いなかみちほうをさしてあるいてゆきました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
熱い海岸の砂地の反射にぐったりとした妻は、陽のかげってゆく田舎路いなかみちを歩いて行く。
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そして、かえでのくるまうえせて、ガラガラと田舎路いなかみちいてまちほうへとゆきました。
葉と幹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、さびしい、あまりひととおらない田舎路いなかみちを、どこまでもまっすぐにあるいてゆきました。すると、あちらから、一人ひとりの百しょうが、二とうひつじいて、こちらにきかかりました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある、からすはうえや、はたけうえんで田舎路いなかみちをきかかりますと、並木なみきうしがつながれていました。そのからだくろしろぶちでありました。そして、おもをしょっていました。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)